落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

28 この感情の意味は(ライオネルside)

 チラリと壁に掛かった時計を見るが、先程確認してから五分も経過していなかった。

「フォーレン副団長、どうしましたかっ?」

 書類の整理をしていたデービスが手を止めて、こちらを窺っている。俺が時計を気にしていたのに気付いていたらしい。

「あ、いや、何でもない」

 俺は再び書類にペンを走らせる。

 そろそろ時間だと思うのだが、今日もアイリスから護衛依頼は来ないのだろうか。
 アイリスの代わりだという聖女と買い出しに行った日から数日たったが、彼女からの連絡は来ない。

 あの日はいつも通り彼女から連絡をもらい、神殿に向かったのだが、やってきたのは他の聖女だった。
 あれは確か、ケーシー侯爵令嬢だったか。

 その聖女がアイリスがいつも使用している籠を持っていたので、最初は本当に代理なのだと聖女の話を鵜呑みにしてしまったが、すぐに疑念を抱いた。

 市場に行くのにあんな目立つ服装で、踵の高い靴を履き、買う物の名前も知らないような人物に、アイリスが本当に代わりを頼むわけがない。

 その事に気付いたとしても、もしこの聖女を粗雑に扱い、アイリスにもしものことがあれば困ると思い我慢した。
 別れ際、よろめいて抱きついてきた聖女に、もうこのような真似はするなと釘を刺してはおいたが……。

 平民出身の見習い聖女であるアイリスは、神殿での立場は弱いはずだ。
 彼女に何もなければよいのだが、心配だ。
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