落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
31 この気持ちを白鳩に乗せて
「はぁ〜、疲れた〜」
一日のスケジュールを終え、自室のベッドに飛び込んだ。ついさっきまでダンスレッスンを受け、みっちりとしごかれていた。おかげでだいぶ動けるようになってきたとは思う、……たぶん。
サイドテーブルに置いた水差しから聖水をグラスに注ぎ入れると、それを一気に飲み干した。
「く〜っ、おいし〜。染み渡る〜」
身体はみるみるうちに癒えてくるのを感じるが、精神的疲労が癒えるわけではない。夜会が近づくたびに憂鬱さは増している。
私は窓辺に向かうと、ガタッと音を立てて窓を押し開けた。
正式な聖女になったので、近いうちに部屋を移動することになった。八年間慣れ親しんだこの部屋とは、もうすぐお別れだ。そう思うとやっぱり淋しい。
窓の隙間から心地の良い夜風が吹き込み、私の髪を揺らす。黒紫色の空には丸い月が浮かんでいる。
「あ、今日って満月だったんだ。綺麗……」
黄金に輝く月はライオネル様を連想させる。静かに周囲を照らす光はとても優しい。
実はライオネル様を助けたあの日から、彼とは一度も会っていなかった。
聖女に就任した私は、市場に買い出しなんて出来るわけもなく、お務め以外の外出はしていない。護衛も神殿専属の騎士様がいるのでその方にお願いすることになっている。
ライオネル様の怪我の具合いをエリゼに尋ねてみたら、問題はないとのことだった。
あの時の負傷した彼の姿を思い出すと、今でも恐怖で身体が震える。また、何か起こったらどうしよう……と、顔を合わせるまで不安は拭えない。
机の上に置いてあった魔伝言鳩を一枚手に取ると、胸がきゅっと苦しくなった。
一日のスケジュールを終え、自室のベッドに飛び込んだ。ついさっきまでダンスレッスンを受け、みっちりとしごかれていた。おかげでだいぶ動けるようになってきたとは思う、……たぶん。
サイドテーブルに置いた水差しから聖水をグラスに注ぎ入れると、それを一気に飲み干した。
「く〜っ、おいし〜。染み渡る〜」
身体はみるみるうちに癒えてくるのを感じるが、精神的疲労が癒えるわけではない。夜会が近づくたびに憂鬱さは増している。
私は窓辺に向かうと、ガタッと音を立てて窓を押し開けた。
正式な聖女になったので、近いうちに部屋を移動することになった。八年間慣れ親しんだこの部屋とは、もうすぐお別れだ。そう思うとやっぱり淋しい。
窓の隙間から心地の良い夜風が吹き込み、私の髪を揺らす。黒紫色の空には丸い月が浮かんでいる。
「あ、今日って満月だったんだ。綺麗……」
黄金に輝く月はライオネル様を連想させる。静かに周囲を照らす光はとても優しい。
実はライオネル様を助けたあの日から、彼とは一度も会っていなかった。
聖女に就任した私は、市場に買い出しなんて出来るわけもなく、お務め以外の外出はしていない。護衛も神殿専属の騎士様がいるのでその方にお願いすることになっている。
ライオネル様の怪我の具合いをエリゼに尋ねてみたら、問題はないとのことだった。
あの時の負傷した彼の姿を思い出すと、今でも恐怖で身体が震える。また、何か起こったらどうしよう……と、顔を合わせるまで不安は拭えない。
机の上に置いてあった魔伝言鳩を一枚手に取ると、胸がきゅっと苦しくなった。