落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

34 夢のような夜会(2)

 国王陛下と王妃殿下がご入場され、開会の挨拶がなされた。その後、王太子殿下と婚約者様のダンスが始まり、その優雅さに目を奪われる。
 すごい、これが本物のダンスなのね。
 殿下達が踊り終わると、デビュタントを迎えたご令嬢達と共に私も踊ることになった。

 ワルツのリズムに合わせて必死にステップを踏むが、失敗してライオネル様の足を思いっきり踏んでしまう。

「あ、わわっ、ごめんなさいっ」

「大丈夫だが、……フッ」

 突然ライオネル様が吹き出したので顔を上げると、声を押し殺して笑っている。

「えっ、どうしたんですか!?」

「いや、ちょこちょこしてて可愛いと思ってな」

「ちょこちょこ……。もしかしてリスのようだとか思ってないですよね?」

 じとっとライオネル様を睨みつけるが、まだ笑いを堪えているようだった。

「さぁ、どうだかな。それより、下ばかり見てても駄目だ。しっかり顔を上げて背筋を伸ばせ」

「そんなこと言われましても、難しいです」  

「大丈夫だ。俺に身を委ねろ」

 そう囁いたライオネル様に身体を引き寄せられる。
 不思議なことにさっきまでの緊張が解け、その後は楽しくダンスを踊ることができた。


 大聖女様と無事合流できた私達は、国王陛下へ挨拶に伺うことになる。
 大聖女様から、二百年ぶりの真の聖女だと紹介され、国王陛下から「この国の為に尽力してほしい」とお言葉を賜った。

 その後、神殿と関わりの深い貴族の方への挨拶が終わると、私はやっと解放された。

「お疲れ、よく頑張ったな」

「はい……」


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