落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

36 夢が醒めるのは突然に(2)

 フェリシティ様は優雅に口元に扇子を当て、笑い出した。
「ふっふふっ。聖女の私に向かって回復魔法を使えないだなんて、ライオネル様でもご冗談をおっしゃるのですね。ふふっ」

「いや、冗談ではない。……アンディ、例の物は持っているか?」

「もちろん! これね〜」

 いつの間にかバルコニーに来ていたアンディさんが、服の内ポケットから一枚の紙を取り出してペラペラと振る。

「これはね、フェリシティ嬢の魔力の検査結果だよ〜。魔術師団長からも証明された正式なものだからね。ちなみに君の魔力は、神殿から君の魔力が込められた聖水を提供してもらったのを使ったよ〜」

「まぁ、それは興味深いですね。何がわかりましたか?」

 フェリシティ様は微笑みを崩さないまま、淡々とした口調で言った。

「そうだね~。まず一つ目は、アイリスちゃんにかけられてた魔法の魔力と、君の魔力が一致してたこと。二つ目は、君には聖属性の魔力の反応が無かったことかな〜」

 聖属性の魔力が無い!? それって、やっぱりフェリシティ様は回復魔法が使えないってこと!? じゃあ今まで体調が回復していたのはなぜ? あれは回復魔法じゃないの? 
 理解が追いつかない。

「……うふふっ、そうですか。魔術師団ではそんなことも調べられるのですね。感服いたしました」

 アンディさんの報告を聞いても、フェリシティ様は特に表情を変えることはなかった。

「フェリシティ嬢、一体どういうことなんだ?」

 ライオネル様が尋ねると、彼女は淡々と語り始める。

「それは聖女になるのに必要だったからです。ライオネル様もゴードン家の事情をご存知でしょ? 私には選択肢は無かった。その呪縛から逃れて自由になるには聖女になるしかないと思ったのです。ですから、他属性の魔力を変換魔法で聖属性に変換し、回復魔法を作り出したのです」

 回復魔法を作り出す……? そんなことができるの?

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