落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

5 兄と妹(2)

 買い物を終えた私達は、神殿の裏門に到着した。

「はぁ〜。とっても楽しかったですわ。お兄様、ありがとうございました」

 エリゼはまだ市場の余韻に浸っているようだ。
 私の買い物中エリゼは興味津々に見ていて、騎士様は荷物持ちをしてくれた。

「聖女殿、これを」

 差し出された籠を受け取った。

「あ、ありがとうございました、騎士様」

「あぁ」

「お二人はまだ『騎士様』『聖女殿』と呼び合ってるんですか? 他人行儀ですわ。折角仲良くなりましたのに」

 仲良く……なっていないと思うし、迷惑ばかりかけてる気がする。

「そういえば、君の名を聞いていなかったな」

「あ、はい。私はアイリス・ヒースです。アイリスと呼び捨てで構いませんので」

「わかった。俺はライオネル・フォーレンだ。ライオネルで構わない」

「はい。じゃあ、ライオネル様と?」

 私の問いにライオネル様は頷いた。

「ふふっ。良かったですわ」

 なぜかエリゼは私たちのやり取りを見て、満足そうに微笑んでいた。

「エリゼ、笑ってる場合じゃない。もう市場に行こうなどと考えるな。父上や兄上達に知られたら心配になられるぞ」

「そ、そうですね……。ライオネルお兄様が叱られてしまいますね……。自重しますわ」

 エリゼが肩をすくめた。私には分からないが、貴族のご令嬢だし色々とあるのだろう。

「アイリス、君もだ」

「へっ? 私?」

 急に話を振られたが意味が分からずにいると、ライオネル様は話を続けた。
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