落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

6 家族との別れ

 私はパエンドール王国の北西に位置するマール村で、優しい両親、五つ下の可愛い妹と慎ましやかに暮らしていた。

「おねーちゃん。まってっ」

 私が家の前の畑に向かって歩いて行くと、妹のアニーが小さな歩幅で一生懸命に走って付いてきた。くるくるの赤毛が風になびいている。

「おねーちゃっ……きゃっ」

 どてん。

「……う、う、うぇーん。いたいよぉ。わ――んっ」

「アニーッ。大丈夫?」

 後ろで転んで泣いているアニーに駆け寄り、抱き起こす。彼女の手のひらと膝が擦りむけて血が滲んでいた。

「大丈夫よアニー。お姉ちゃんがすぐに治してあげるわ」

 私が怪我の所に手をかざすと白い光が溢れ、傷はみるみるうちに治っていく。アニーは潤んだ瞳を目一杯広げて、光を見つめている。

「わぁっ、おねーちゃん、すごぉい。もういたくなぁい」

「ふふっ、そう? 良かった」

 私に魔法が使えるのが分かったのは、怪我をしたアニーを助ける時だった。
 お転婆なアニーは木に登り、落ちた時がある。頭を打ってぐったりしていたアニーを助けたいと思った時、身体の中から力が溢れてきて白い光がアニーに降り注いだ。
 
 その光のおかげでアニーは目を覚ましたのだ。自分でも何が起こったか分からなかったけど、妹を助ける力があって嬉しく思った。


 しかし、八年前。私が十歳の時、家族との別れは突然やってきた。
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