落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

9 初めての護衛依頼(2)

「王都の揚げ菓子はおいしいですね。私の故郷の村でも食べたんですけど、もっと素朴な味でした。特別な時しか食べられなかったんで、妹といつも取り合いで。でも最後は妹に譲ってました。やっぱり妹には弱いんですよね〜、ふふっ」

 揚げ菓子で昔のことを思い出したせいか、関係ない話が口をついて出た。ライオネル様の表情は変わらないが、静かに耳を傾けてくれている。その空気感には冷たさはなく、とても穏やかだった。

「君にも妹がいるのか?」

「は、はい、そうです」

「そんなに仲の良い姉妹なら、君が王都に来て寂しがっているのではないか? まだ幼いのだろう?」

「あ、いえ……」

 もう亡くなっていることを話そうか悩んだが、ライオネル様なら聞いてくれる気がして話すことにした。

「……実はもう……いないんです。八年前に魔物に村が襲われて、その時家族全員犠牲に……」

「そうか……。……辛かったな」

「はい……」

 私は素直に頷いた。ライオネル様は騎士団で魔物討伐に行ったりして、深刻な被害を目の当たりにしてるはずだ。私以外の多くの被害者を見てきたと思う。きっと誰よりも状況を知っている。だからこそ私は隠すことなく話せたのかもしれない。

「聖女になれば、人々を助けることが出来る。被害者を助けることが出来れば、私のように辛い思いをする人を減らせるかもしれないって思うんです。……そう思ってはいるんですが、魔力も弱くてずっと見習いのままで、全然役にたってないんですが……」

 私は情けなくなって苦笑いをした。

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