落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

12 過去の出来事(ライオネルside)

「フォーレン副団長っ! 失礼しまぁっす!」

 部下のデービスが筋骨隆々な体を直角に折り曲げるように一礼し、執務室に入ってきた。

「こちら報告書です、確認お願いしまぁすっ!」

「あぁ」

 デービスは太い指で書類を机の上に広げる。

「こちらにはサインをお願いしますっ!」

「あぁ」

「終わりましたら自分が団長の所に持って行きますんでっ!」

 デービスの大音声が頭に響き、耳を押さえる。

「デービス、悪いがもう少し静かに話してくれ……」

「あ、申し訳ございませんっ!」

「……」

 デービスは謹厳実直、訓練も一生懸命で、部下として信頼しているが、少々声がデカい。

 俺は王都内の警備隊と、魔物討伐部隊からの報告書に目を通し、頭を抱えた。

「やはり深刻な事態だな……」

 魔物の活発化により様々な問題が惹起している。各地で魔物による被害が起き、比較的安全な王都に人々が押し寄せている。
 その流れにならず者が紛れ、スリ、強盗、人身売買などの事件が増加した。住む場所や、家族を失った者達が犯罪に手を染めるケースも少なくない。
 先頃から王都内は厳重に警備しているが、それでも問題は後を絶たないのだ。

「とうとう王都周辺にまで魔物の被害が出たのか」

「そうらしいですね。しかも厄介な植物系の魔物だそうですっ」

「植物系か」

 植物系の魔物は種子が風に乗って飛び、王都の城壁を飛び越えて来る恐れがある。しかも、どこで発芽するか分からない。

 数年おきに起こる魔物の活発化。周期的なものなのか、気象状況が影響しているのか。神がお怒りになっていると言う者もいるが……。根本的原因は不明だった。
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