落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

2 騎士様との出会い

 神殿では、騎士や貴族、一般の民など区別することなく、病気や怪我の治療を行っている。

「気を付けて帰ってくださいね」

 神殿の入口で高齢の患者さんを見送ると、入れ替わるように二人の騎士様が入ってきた。

「聖女殿。治療を頼めるか」

「は、はいっ。こちらへどうぞ」

 私は慌てて空室の札が下がっている処置室へ案内した。
 処置室は全部で十部屋あり、向かい合わせに五部屋ずつ横に並んでいる。ドアのない半個室で、部屋の中には簡易的なベッドが一台ずつ置いてある。

「どうされましたか?」

「彼の治療をお願いしたい」

 付き添ってきたと思われる黒髪で長身の騎士様が、無機質な声で言う。濃紺の騎士服を着ているので正騎士だ。二十代前半くらいだろうか。纏う空気がどこかひんやりしていて、私は緊張で背筋を伸ばす。

 負傷した騎士様は茶色の騎士服なので従騎士のようだ。幼さが残る顔は蒼白で、かなり痛そうに顔を歪めている。
 怪我をした腕には白い布が巻かれていたが、赤く血が滲んでいた。

「……副団長。お忙しい中、付き添ってくださって申し訳ございません」

「それは先程も聞いたが」

 従騎士の言葉に黒髪の騎士様は眉間に皺を寄せ、溜息をつく。

「はい、すみません……」

 怖い……。そう思って見ていると、黒髪の騎士様に睨まれる。ひぃっ。
< 5 / 139 >

この作品をシェア

pagetop