落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

14 リスの姉妹?

 ライオネル様に護衛を頼んだ時には、回復魔法をかけるようになった。場所はこの間治療したブナの木の所だ。

「終わりました。身体の調子はどうですか?」

 魔法をかけ終わり、ライオネル様に尋ねる。

「あぁ……、悪くは……ない……」

 ライオネル様は吐息まじりに答え、髪を気怠げにかき上げた。顔もわずかに上気しているように見える。

 え? なに、なんなの。この溢れ出る色気はっ。何か見てはいけないものを見ている感覚だわ。

「ええっと、そ、それは良かったです!」

 それ以上見ていると、色気に当てられそうだったので目をそらした。

 その時ガサガサッと草の揺れる音がして、草の間からアカリスが飛び出してきた。

「あ、リスだわ!」

 アカリスはつぶらな瞳をして、赤茶色のフサフサした大きな尻尾を後ろに伸ばし、地面を見ながらこちらに近づいてくる。食べ物探しに夢中で、私達の存在に気づいていない様子だ。
 リスは警戒心が強いので、こんなに近くで見たことない。かわいい〜。

 私は屈みながら、息を潜めてリスをじっと観察する。リスが目の前にきた時、私の存在に気づきビクッと身体を震わせて、また草むらに逃げて行ってしまった。

「あー、行っちゃった……」

 残念に思いつつ後ろを振り返ると、その一部始終を見ていたらしいライオネル様が僅かに笑みをこぼす。

「フッ、まるで姉妹のようだったな」

「へ? 姉妹?」

 姉妹って? つまり姉=私で、妹=リスってことですか……? 子供扱いの次は、小動物扱い!?

「ええっ。ちょっとライオネル様、バカにしてます!?」

「いや、ちがっ、可愛いということでっ」

 そう言いかけたライオネル様が慌てて口をつぐむ。

「え?」

「あ、いや……」

 今、可愛いって言った!? 私のこと!? 
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