落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
16 エリゼの思い
差し出されたティーカップを持つ手が震える。
紫色の可憐なスミレが描かれ、金色に縁取りされている。もし割ってしまったら、一生かかっても弁償できないだろう。
恐る恐るカップに唇をつけ、紅茶を一口飲んだ。花のような甘い香りが鼻から抜けて、全身を巡っていく。
「わっ、いい匂い。……おいしい……」
「本当ですか? 良かったですわ」
私の正面に座っているエリゼが、両手を合わせ嬉しそうに声を上げた。
先程、正門でエリゼに後で部屋に来てと言われ訪れると、部屋の中に案内され、花柄の淡いピンクの二人掛けソファーに座らされた。
テーブルもソファーも細やかな装飾が施され、豪華で上品だった。ガラス扉のキャビネットには、本や綺麗なドレスを来た人形が並んで置いてある。窓際にはピンク色の薔薇が飾られ、エリゼの雰囲気にピッタリな可愛らしい部屋だ。
そんな場違いな空間で、私はエリゼが頑張って練習したという紅茶をご馳走になっている。
「こちらはアプリコットのタルトですわ。先程ライオネルお兄様が持ってきてくださったんです。アイリス、どうぞ召し上がって!」
エリゼに促され、アプリコットのタルトをフォークで口に入れた。口に入れるとトロッと溶けたアプリコットは酸味と甘味のバランスが良く、タルト生地はサクッとして濃厚なバターの味がする。
「わぁ、すごくおいしい!」
「ふふっ、良かったです。アイリスならきっと喜んでくださると思ってましたわ。私の好きなお店のお菓子ですの」
エリゼが満足げに笑っている。
「せっかくライオネル様がエリゼの為に持ってきてくださったのに、私が食べて良かったのかな……?」
「えぇ、大丈夫です。これはあなたの分ですわ」
「え?」
「ライオネルお兄様は、月に一度は紅茶とお菓子を持ってきてくれるんです。ですから、アイリスの分もお願いしておいたのですわ」
えーっ、私の分まで!?
紫色の可憐なスミレが描かれ、金色に縁取りされている。もし割ってしまったら、一生かかっても弁償できないだろう。
恐る恐るカップに唇をつけ、紅茶を一口飲んだ。花のような甘い香りが鼻から抜けて、全身を巡っていく。
「わっ、いい匂い。……おいしい……」
「本当ですか? 良かったですわ」
私の正面に座っているエリゼが、両手を合わせ嬉しそうに声を上げた。
先程、正門でエリゼに後で部屋に来てと言われ訪れると、部屋の中に案内され、花柄の淡いピンクの二人掛けソファーに座らされた。
テーブルもソファーも細やかな装飾が施され、豪華で上品だった。ガラス扉のキャビネットには、本や綺麗なドレスを来た人形が並んで置いてある。窓際にはピンク色の薔薇が飾られ、エリゼの雰囲気にピッタリな可愛らしい部屋だ。
そんな場違いな空間で、私はエリゼが頑張って練習したという紅茶をご馳走になっている。
「こちらはアプリコットのタルトですわ。先程ライオネルお兄様が持ってきてくださったんです。アイリス、どうぞ召し上がって!」
エリゼに促され、アプリコットのタルトをフォークで口に入れた。口に入れるとトロッと溶けたアプリコットは酸味と甘味のバランスが良く、タルト生地はサクッとして濃厚なバターの味がする。
「わぁ、すごくおいしい!」
「ふふっ、良かったです。アイリスならきっと喜んでくださると思ってましたわ。私の好きなお店のお菓子ですの」
エリゼが満足げに笑っている。
「せっかくライオネル様がエリゼの為に持ってきてくださったのに、私が食べて良かったのかな……?」
「えぇ、大丈夫です。これはあなたの分ですわ」
「え?」
「ライオネルお兄様は、月に一度は紅茶とお菓子を持ってきてくれるんです。ですから、アイリスの分もお願いしておいたのですわ」
えーっ、私の分まで!?