落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

17 執務室にて(ライオネルside)

「ライオネル〜。来ったよ〜」

 執務室のドアの真ん中に、アンディが顔が浮かんで見える。
 魔道具か何かなのだろうが、ドアも開けずに顔だけが室内に飛び出している今の状況はかなり不気味だ。

「アンディ。入ってくれ」

「んー、わかった〜。よいしょっと、うぐ〜っ、いででで……」

 ドアをそのまま通り抜けようとしているらしいが、抜け出られる場所が小さいのかかなり苦戦していた。
 ドアの真ん中に穴を開けて、そこから抜け出しているかのように見えるが、アンディが抜け出た場所には穴などは開いていなかった。

「はぁ~っ、やっと通れた〜。まだまだ改良が必要だな〜」

 アンディは皺になったローブを手で払う。

「普通にドアを開けて入ればいいだろう」

「だって〜、開発したばっかの壁を透過する魔道具、他の場所でも試してみたくてさ〜。研究所ではもっと上手くいってたんだけどね〜。う〜ん、なんでだろ? ドアの材質の問題かなぁ?」

 アンディはドアを撫でて確認していた。

「そうか。ところで、頼んだ物は持ってきたのか?」

「あ、そうそう! 持ってきたよ、これね〜 」

 アンディはローブの中からゴソゴソと、俺の頼んだ書物を三冊取り出し、机に重ねて置いた。
 ローブの中にどうやって古書を三冊も入れてきたんだと疑問に思ったが、こいつのことだ、魔道具か何かローブの中に仕込んであるのだろう。

「わざわざ悪かったな。ありがとう」

「どういたしまして〜。魔術師団の書庫で貸し出せるのはこの本だけなんだ。貴重な本だから紛失だけには気を付けてね。ま、おまえのことだから大丈夫だろうけど、一応ね」

「あぁ、わかった」

 俺は一番上にある表紙が少々劣化した書物を取り、慎重にめくってみた。王国の古代文字だろうか……? 読めないわけではないが、解読するには時間がかかりそうだな。

「聖女の魔法や、魔法の歴史書が読みたいだなんて、突然どうしたの〜?」

 アンディが執務室のソファーにどかっと腰を下ろす。
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