落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
25 犬捜し(2)
「ギェェェ――ッ」
けたたましい叫び声に目を開けると、紫色の舌が弾け飛んでいくところだった。
え……?
「アイリスッ」
歪む視界に、剣を構えたライオネル様が立っているのが見えた。
「……!」
ライオネル様……! 来てくれたんだ……!
舌を切られた魔物はユラユラと左右に揺れながら、蔓をライオネル様の方に伸ばしてきた。
「はっ」
ライオネル様は素早く蔓をかわし、茎の部分に剣を振りかざした。茎の中心から切られた魔物は、悲鳴を上げながら枯れていった。
「アイリスッ。大丈夫か!?」
座り込んだまま呆然としていると、私の元に駆け寄ってきたライオネル様に犬ごとぎゅっと抱き締められた。
「ライオネルさまっ!?」
突然のことにパニクっている私の耳元に、ライオネル様の囁くような声が聞こえてきた。
「無事で良かった……。また目の前で大切な人を失ったら、俺は耐えられない……」
ライオネル様の腕が僅かに震えていた。
「ありがと……ございま……した……。怖かっ……」
まだガタガタと全身の震えが止まらないでいると、ライオネル様の腕に力が込められる。
温もりを感じて、段々と力が抜けてきた私は彼の胸に顔をうずめる。大きな手が私が落ち着くまでの間、優しく頭を撫でてくれた。