赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
49.偽物姫のおまじない。
********
帝国某所にて。
「随分、派手にやっているじゃないか」
女王様はご機嫌ナナメみたいだね、と茶化すような声が響く。
「みんなの憧れ、淑女の鑑の名が泣くんじゃないかい? グレイス」
名を呼ばれ振り返ってその人物を紫紺の瞳に映したグレイスは、
「ふふっ、嫌ですわ。リックったら。ここでは武器商人ジェシカ・ローウェンの名で呼んでくださらなくては」
ジャキっと構えて慣れた動作で銃を構えたグレイスは、
「でなければ、私もあなたをハリス公子、とお呼びしますよ?」
堅苦しいの、お嫌いでしょう? と綺麗に笑って銃を撃った。
それは見事に命中し、命乞いをしていた男の生命を強制的に終わらせる。
「それにこれはただの性能実験です」
いい武器入ってますわよ、とグレイスはビジネスパートナーであるハリス公国大公家嫡男エリック・ハリスに笑いかけた。
「相変わらず、素晴らしい腕前だね」
パチパチと拍手を送るエリックに、
「あら、戦争王のご子息に褒められるだなんて悪い気はしませんわね」
淑女らしい礼をしてみせるグレイス。
戦争王はハリス公国大公の別名。そしてキャメル伯爵家裏稼業の得意先だ。
おじ様はお元気? とグレイスは世間話をしながら銃を振り回し、
「これはもう少し軽くした方が良さそうね。子どもでも扱えるレベルで」
改善点を従者に伝えて武器を渡した。
「で、わざわざ私を呼び出すなんて一体何の御用かな、我が麗しの女王様?」
冗談めかし、恭しくそう尋ねるエリックに綺麗に微笑んだグレイスは、
「大したお願いではないですわ。ちょっと目障りな雑草を枯らして欲しくって」
絵姿を2枚手渡す。
「私、雑草って嫌いなの。だって、美しい花が育つための養分を横取りしてしまうでしょう?」
「おや美人さん。私としては楽しめれば良いんだけど」
エリックはぺらっと一枚の絵姿をグレイスに見せ、
「こっちの子も処分しちゃっていいの? 表の君の親友でしょ、確か」
と確認する。
そこにはシエラ・フォン・リタが描かれていた。
「ふはっ、親友? 本当にそんなモノが存在するとでも?」
面白い冗談、と一蹴したグレイスは、
「ソレ、もういらないの。夫のシェアなんて趣味じゃないし。その世間知らずは目障りだから修道院にでも突っ込んで置いて」
妻の座は一つで充分、と言い切る。
「皇后の椅子には私が座る。そして、キャメル一族がこの国を取り仕切るの」
表からも裏からも、ね。
そう言って不敵に笑ったグレイスは、終焉の開幕を静かに告げた。
帝国某所にて。
「随分、派手にやっているじゃないか」
女王様はご機嫌ナナメみたいだね、と茶化すような声が響く。
「みんなの憧れ、淑女の鑑の名が泣くんじゃないかい? グレイス」
名を呼ばれ振り返ってその人物を紫紺の瞳に映したグレイスは、
「ふふっ、嫌ですわ。リックったら。ここでは武器商人ジェシカ・ローウェンの名で呼んでくださらなくては」
ジャキっと構えて慣れた動作で銃を構えたグレイスは、
「でなければ、私もあなたをハリス公子、とお呼びしますよ?」
堅苦しいの、お嫌いでしょう? と綺麗に笑って銃を撃った。
それは見事に命中し、命乞いをしていた男の生命を強制的に終わらせる。
「それにこれはただの性能実験です」
いい武器入ってますわよ、とグレイスはビジネスパートナーであるハリス公国大公家嫡男エリック・ハリスに笑いかけた。
「相変わらず、素晴らしい腕前だね」
パチパチと拍手を送るエリックに、
「あら、戦争王のご子息に褒められるだなんて悪い気はしませんわね」
淑女らしい礼をしてみせるグレイス。
戦争王はハリス公国大公の別名。そしてキャメル伯爵家裏稼業の得意先だ。
おじ様はお元気? とグレイスは世間話をしながら銃を振り回し、
「これはもう少し軽くした方が良さそうね。子どもでも扱えるレベルで」
改善点を従者に伝えて武器を渡した。
「で、わざわざ私を呼び出すなんて一体何の御用かな、我が麗しの女王様?」
冗談めかし、恭しくそう尋ねるエリックに綺麗に微笑んだグレイスは、
「大したお願いではないですわ。ちょっと目障りな雑草を枯らして欲しくって」
絵姿を2枚手渡す。
「私、雑草って嫌いなの。だって、美しい花が育つための養分を横取りしてしまうでしょう?」
「おや美人さん。私としては楽しめれば良いんだけど」
エリックはぺらっと一枚の絵姿をグレイスに見せ、
「こっちの子も処分しちゃっていいの? 表の君の親友でしょ、確か」
と確認する。
そこにはシエラ・フォン・リタが描かれていた。
「ふはっ、親友? 本当にそんなモノが存在するとでも?」
面白い冗談、と一蹴したグレイスは、
「ソレ、もういらないの。夫のシェアなんて趣味じゃないし。その世間知らずは目障りだから修道院にでも突っ込んで置いて」
妻の座は一つで充分、と言い切る。
「皇后の椅子には私が座る。そして、キャメル一族がこの国を取り仕切るの」
表からも裏からも、ね。
そう言って不敵に笑ったグレイスは、終焉の開幕を静かに告げた。