赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
89.偽物姫は暴かれる。
「えーっと、すみませんでした」
一通り泣いて落ち着いた私は気まずさと気恥ずかしさから顔を覆ったまま謝罪する。
セルヴィス様はパタパタと尻尾を振るだけで私を咎めたりはせず、私の手にふわふわの頭を押しつけてくる。
「ふわぁー相変わらずふわっふわ……って、ちょっとお手入れサボりましたね? このへん毛が絡んでるじゃないですか!」
がしっと狼の両頬を掴みむぅと睨む。
「もう! もう!! せっかく特製のシャンプーとトリートメントをお渡しいたしましたのに。それに私のとっておきのブラシまで献上したというのに、なぜこんなことにっ」
許すまじ、と不満を訴えていると、ヴィーの身体はふわりと光に包まれて、あっと思う間もなく狼はヒトの形に変化した。
「仕方ないだろ。道具があったって、整えてくれるヒトがいなかったんだから」
漆黒の髪に紺碧の瞳。
耳に心地よい、優しく響く低い声。
「それにしても久しぶりの再会だと言うのに、真っ先に出てくるのが毛並みに対する文句とは。まぁ、そんなところが君らしいけど」
楽しげに綺麗に微笑むその人は、私がよく知っている冷酷無慈悲な皇帝陛下の仮面を外した時のセルヴィス様だった。
「……自在に戻れるんですか」
驚き過ぎて何度も目を瞬かせる私に、
「一定時間経過すれば自分の好きなタイミングで戻れる。面倒だから人には教えていないが」
内密に、とイタズラでもするかのように楽しげに小首を傾げるセルヴィス様。
「だから、そういう国家機密レベルの秘密をさらっと漏らすのやめてください」
あぁ、もうこの人はっ! と額を抑える私に、
「誰にでもはしないぞ? まぁ、でも秘密を知られたからには責任を取ってもらおうか」
セルヴィス様は悪い顔をしてニヤリと口角を上げる。
「何ですかそれ。当たり屋ですか!」
「安心しろ。自覚のある当たり屋だ」
「なおタチが悪い!!」
もう! と言い返したところでセルヴィス様の紺碧の瞳と視線が交わり、私達は同じタイミングで噴き出すように笑った。
いつも通りのやり取りに涙が出そうなくらい嬉しかったけれど。
私に残された時間は多くない。ならば早々に話をすべきだろう。
「ここに来たと言う事は聞いたのですね」
私が偽物だ、と。
知ってなおここに来てくれたのだというのなら、私はセルヴィス様の話を聞かねばならない。
それがどんな言葉であっても。
「ああ。だが、その話の前に少し失礼する」
セルヴィス様はそういうとふわりと私を抱え上げてそのままベッドに戻し、セルヴィス様自身も添い寝をするかのように横たわる。
後宮で私が使っていたものやセルヴィス様のベッドよりずっと狭く近い距離に私の心臓が急速に跳ねる。
「あのっ」
「いつまでも床に座らせるわけにはいかないし、ひどい顔色だ」
心配そうな紺碧の瞳は、そう言って譲ってくれそうにない。
私には抵抗するだけの力もないし、身体がとてもダルい。きっと、今を逃したらもう話をする機会もなくなってしまうから。
「……狭い、なんて文句言わないでくださいね」
今回は私が折れることにした。
一通り泣いて落ち着いた私は気まずさと気恥ずかしさから顔を覆ったまま謝罪する。
セルヴィス様はパタパタと尻尾を振るだけで私を咎めたりはせず、私の手にふわふわの頭を押しつけてくる。
「ふわぁー相変わらずふわっふわ……って、ちょっとお手入れサボりましたね? このへん毛が絡んでるじゃないですか!」
がしっと狼の両頬を掴みむぅと睨む。
「もう! もう!! せっかく特製のシャンプーとトリートメントをお渡しいたしましたのに。それに私のとっておきのブラシまで献上したというのに、なぜこんなことにっ」
許すまじ、と不満を訴えていると、ヴィーの身体はふわりと光に包まれて、あっと思う間もなく狼はヒトの形に変化した。
「仕方ないだろ。道具があったって、整えてくれるヒトがいなかったんだから」
漆黒の髪に紺碧の瞳。
耳に心地よい、優しく響く低い声。
「それにしても久しぶりの再会だと言うのに、真っ先に出てくるのが毛並みに対する文句とは。まぁ、そんなところが君らしいけど」
楽しげに綺麗に微笑むその人は、私がよく知っている冷酷無慈悲な皇帝陛下の仮面を外した時のセルヴィス様だった。
「……自在に戻れるんですか」
驚き過ぎて何度も目を瞬かせる私に、
「一定時間経過すれば自分の好きなタイミングで戻れる。面倒だから人には教えていないが」
内密に、とイタズラでもするかのように楽しげに小首を傾げるセルヴィス様。
「だから、そういう国家機密レベルの秘密をさらっと漏らすのやめてください」
あぁ、もうこの人はっ! と額を抑える私に、
「誰にでもはしないぞ? まぁ、でも秘密を知られたからには責任を取ってもらおうか」
セルヴィス様は悪い顔をしてニヤリと口角を上げる。
「何ですかそれ。当たり屋ですか!」
「安心しろ。自覚のある当たり屋だ」
「なおタチが悪い!!」
もう! と言い返したところでセルヴィス様の紺碧の瞳と視線が交わり、私達は同じタイミングで噴き出すように笑った。
いつも通りのやり取りに涙が出そうなくらい嬉しかったけれど。
私に残された時間は多くない。ならば早々に話をすべきだろう。
「ここに来たと言う事は聞いたのですね」
私が偽物だ、と。
知ってなおここに来てくれたのだというのなら、私はセルヴィス様の話を聞かねばならない。
それがどんな言葉であっても。
「ああ。だが、その話の前に少し失礼する」
セルヴィス様はそういうとふわりと私を抱え上げてそのままベッドに戻し、セルヴィス様自身も添い寝をするかのように横たわる。
後宮で私が使っていたものやセルヴィス様のベッドよりずっと狭く近い距離に私の心臓が急速に跳ねる。
「あのっ」
「いつまでも床に座らせるわけにはいかないし、ひどい顔色だ」
心配そうな紺碧の瞳は、そう言って譲ってくれそうにない。
私には抵抗するだけの力もないし、身体がとてもダルい。きっと、今を逃したらもう話をする機会もなくなってしまうから。
「……狭い、なんて文句言わないでくださいね」
今回は私が折れることにした。