赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
28.偽物姫は期待される。
パラリ、と政務室で悩ましげに眉を寄せセルヴィスは本をめくる。
ガーベラ8本で感謝を表すのだと分かり、パタンと閉じる。
花言葉は分かったが、知りたい事は当然本には載っていない。
ガーベラは確かクローゼアで彼女の紋章に使われていた。一番好きだというその花を見て、何故彼女は泣いたのだろう?
日中に会うイザベラとは違い、消えてしまいそうなくらい儚い彼女の事が気がかりで。
気づけば、いつも夜を待つようになっていた。
そんなセルヴィスを見ながら、
「……何っていうか……こう。セルヴィス様、すっかり毛艶がよくなりましたね」
足繁く妃の元に通った成果ですね、と笑いを噛み締めるオスカー。
「毛並みって言わなかっただけよしとする」
とセルヴィスは投げやりに返事を返した。
『仲直りしましょう』
そう彼女に言われて以降、彼女との関係が少し変わった。
また会いに来てと彼女に言われたセルヴィスは、狼の姿で幾度となくイザベラの元を訪れた。
その度に皇帝陛下である時には決して見せてくれないような、取り繕わない笑顔で迎えてくれるようになった彼女。
そんなイザベラは狼であるセルヴィスが来るといつも無遠慮に撫でて、それはそれは丁寧に世話をしてくれるのだった。
具体的にはお手製のシャンプーで洗われ、丁寧にブラッシングされたあと毎度マッサージされるまでがセット。
なんならそのまま一緒に寝る事も多い。彼女が痛みを訴えないか、しっかり眠れているのかを確認するのが習慣化したセルヴィスはすっかり寝不足になっていた。
完全なる犬扱い。が、実際かなり気持ち良かったりする上、狼の正体を黙っているのは自分なので文句は言えない。
基本的にヒトに触られるのが嫌いなセルヴィスは普段から湯浴みも自分で行っている。
特に不便はしていないのだが、やはり手入れされるのとされないのとでは違うのだろう。
結果、セルヴィスの黒髪はとても艶やかになり手触りも指通りの良いものに変わった。
「陛下のシャンプー何使ってるんですか、って問い合わせ殺到してるんですが、商品化できませんかね、コレ」
セルヴィスの机に置かれているローズマリーの精油を眺めながら、オスカーは割とガチなトーンで問いかける。
「イザベラに勘付かれるから絶対やめろ」
今は亡き獣人族の古代文字まで知っているほどイザベラは博識だ。
他民族国家であるオゥルディ帝国の王族と滅んだはずの血筋を結びつける可能性は大いにある。
自分が獣人だとバレたくないセルヴィスとしては避けたい展開だ。
「一国の主が犬扱い……ふふ、これバレた時イザベラ妃がどんな顔をするのか見物ですね!」
「……オスカー。お前面白がってるだろ」
「まぁ、面白いか面白くないかの二択なら俄然面白いですね」
当初イザベラを警戒し、彼女に獣人だとバレるのだけは止めてくれと釘を刺してきていたはずのオスカーは今ではすっかりこの状況を楽しんでいる。
ガーベラ8本で感謝を表すのだと分かり、パタンと閉じる。
花言葉は分かったが、知りたい事は当然本には載っていない。
ガーベラは確かクローゼアで彼女の紋章に使われていた。一番好きだというその花を見て、何故彼女は泣いたのだろう?
日中に会うイザベラとは違い、消えてしまいそうなくらい儚い彼女の事が気がかりで。
気づけば、いつも夜を待つようになっていた。
そんなセルヴィスを見ながら、
「……何っていうか……こう。セルヴィス様、すっかり毛艶がよくなりましたね」
足繁く妃の元に通った成果ですね、と笑いを噛み締めるオスカー。
「毛並みって言わなかっただけよしとする」
とセルヴィスは投げやりに返事を返した。
『仲直りしましょう』
そう彼女に言われて以降、彼女との関係が少し変わった。
また会いに来てと彼女に言われたセルヴィスは、狼の姿で幾度となくイザベラの元を訪れた。
その度に皇帝陛下である時には決して見せてくれないような、取り繕わない笑顔で迎えてくれるようになった彼女。
そんなイザベラは狼であるセルヴィスが来るといつも無遠慮に撫でて、それはそれは丁寧に世話をしてくれるのだった。
具体的にはお手製のシャンプーで洗われ、丁寧にブラッシングされたあと毎度マッサージされるまでがセット。
なんならそのまま一緒に寝る事も多い。彼女が痛みを訴えないか、しっかり眠れているのかを確認するのが習慣化したセルヴィスはすっかり寝不足になっていた。
完全なる犬扱い。が、実際かなり気持ち良かったりする上、狼の正体を黙っているのは自分なので文句は言えない。
基本的にヒトに触られるのが嫌いなセルヴィスは普段から湯浴みも自分で行っている。
特に不便はしていないのだが、やはり手入れされるのとされないのとでは違うのだろう。
結果、セルヴィスの黒髪はとても艶やかになり手触りも指通りの良いものに変わった。
「陛下のシャンプー何使ってるんですか、って問い合わせ殺到してるんですが、商品化できませんかね、コレ」
セルヴィスの机に置かれているローズマリーの精油を眺めながら、オスカーは割とガチなトーンで問いかける。
「イザベラに勘付かれるから絶対やめろ」
今は亡き獣人族の古代文字まで知っているほどイザベラは博識だ。
他民族国家であるオゥルディ帝国の王族と滅んだはずの血筋を結びつける可能性は大いにある。
自分が獣人だとバレたくないセルヴィスとしては避けたい展開だ。
「一国の主が犬扱い……ふふ、これバレた時イザベラ妃がどんな顔をするのか見物ですね!」
「……オスカー。お前面白がってるだろ」
「まぁ、面白いか面白くないかの二択なら俄然面白いですね」
当初イザベラを警戒し、彼女に獣人だとバレるのだけは止めてくれと釘を刺してきていたはずのオスカーは今ではすっかりこの状況を楽しんでいる。