赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
43.偽物姫の好きな花。
時折解説しつつ、セルヴィス様と植物園をゆっくり散策する。
品種も豊富で個人的には見ていて全く飽きないけれど、観賞用のお花も薬として使える植物も割とごちゃ混ぜになっている。
何よりも、誰でも立ち入れるはずの施設なのに人が少ないのが気になった。
というか、たまにすれ違ったも職員証を首からかけている人しかいない。
この視察は急遽決まったものだし、特に人払いもされていなさそうなのに。
んーと首を傾げた私に、
「この辺りは馴染みのある花が多いな」
セルヴィス様が声をかけ、指をさす。
そこには色とりどりのガーベラが綺麗に咲き誇っていた。
「これは希望の花、だったな」
それはまだ私がセルヴィス様の正体を知らなかった頃に、黒い狼に聞かせた話だ。
「……覚えておいででしたか」
「あの後、自分でも調べたから」
一番好きな花なんだろうと少し得意げに話すセルヴィス様。
そう、私の一番好きな花。
だって、これは"イザベラ"の花だから。
「綺麗だな」
わざわざ調べてくれたのが嬉しいと思うのに、セルヴィス様の賛辞に何故か胸が嫌な音を立てて軋む。
「ええ、とても」
その音に気づかないフリをして、少し休憩しましょうか? と私は設置されていたベンチを勧めて座る。
ここからならよく鑑賞できそうだ、と思っていた私の髪にセルヴィス様がふわりと触れる。
「まぁ、俺はこっちの方が好きだがな」
よく似合うと言った彼に驚いて、目を瞬かせる。
手を伸ばし髪から外してその花を見る。それは、真っ赤なダリアの花だった。
「これも希望の花だろう?」
そう言って笑ったセルヴィス様は、
「今の髪でも悪くないが、元の髪色ならなお映えるな」
もう一度私の髪にダリアの花をさした。
『そうねぇ、リィルは"ダリア"かしら?』
これはね、勝利の花なの、と教えてくれたのは今は亡きお母様で。
王女として正式に認められない私がベラの紋章を羨ましがった時に作ってくれた非公式の紋章。
それを作るためにお母様が選んだ私の花。
「……帝国では、赤は厭われませんか?」
「何故厭う必要がある?」
私の隣から、優しい声が落ちてきて。
「赤色は見ていると元気が出る。君の色だ」
ふわり、と髪を撫でる。
品種も豊富で個人的には見ていて全く飽きないけれど、観賞用のお花も薬として使える植物も割とごちゃ混ぜになっている。
何よりも、誰でも立ち入れるはずの施設なのに人が少ないのが気になった。
というか、たまにすれ違ったも職員証を首からかけている人しかいない。
この視察は急遽決まったものだし、特に人払いもされていなさそうなのに。
んーと首を傾げた私に、
「この辺りは馴染みのある花が多いな」
セルヴィス様が声をかけ、指をさす。
そこには色とりどりのガーベラが綺麗に咲き誇っていた。
「これは希望の花、だったな」
それはまだ私がセルヴィス様の正体を知らなかった頃に、黒い狼に聞かせた話だ。
「……覚えておいででしたか」
「あの後、自分でも調べたから」
一番好きな花なんだろうと少し得意げに話すセルヴィス様。
そう、私の一番好きな花。
だって、これは"イザベラ"の花だから。
「綺麗だな」
わざわざ調べてくれたのが嬉しいと思うのに、セルヴィス様の賛辞に何故か胸が嫌な音を立てて軋む。
「ええ、とても」
その音に気づかないフリをして、少し休憩しましょうか? と私は設置されていたベンチを勧めて座る。
ここからならよく鑑賞できそうだ、と思っていた私の髪にセルヴィス様がふわりと触れる。
「まぁ、俺はこっちの方が好きだがな」
よく似合うと言った彼に驚いて、目を瞬かせる。
手を伸ばし髪から外してその花を見る。それは、真っ赤なダリアの花だった。
「これも希望の花だろう?」
そう言って笑ったセルヴィス様は、
「今の髪でも悪くないが、元の髪色ならなお映えるな」
もう一度私の髪にダリアの花をさした。
『そうねぇ、リィルは"ダリア"かしら?』
これはね、勝利の花なの、と教えてくれたのは今は亡きお母様で。
王女として正式に認められない私がベラの紋章を羨ましがった時に作ってくれた非公式の紋章。
それを作るためにお母様が選んだ私の花。
「……帝国では、赤は厭われませんか?」
「何故厭う必要がある?」
私の隣から、優しい声が落ちてきて。
「赤色は見ていると元気が出る。君の色だ」
ふわり、と髪を撫でる。