赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
46.偽物姫と黒狼の夜。
「…………陛下」
はぁ、とため息をついた私に近づくと、お行儀よくお座りをしたセルヴィス様が、
「バゥ、バゥ」
と再度鳴いた。
「一応お尋ねしますが、そのお姿では言葉をかわすことはできないのですか?」
「バウ!」
肯定するように大きく鳴いた黒狼《ヴィー》はくるりと背を向けるとふっさふさの尻尾で私の膝をくすぐる。
「ちょっ、ふわぁぁ。モフモフがぁ」
真面目な話をしているのに、誘惑しないでくださいよっ! と抗議をすると、
「ウゥー」
不満げな声を上げた。
「……何に、そんなに怒って?」
「バゥ」
短く鳴くと撫でろとばかりに私の手に柔らかな頭を擦りつけてくる。
それはいつもの、私とヴィーとのやりとりで。
「バウバウ」
黒狼の正体がセルヴィス様だと知って、態度を改めた私への抗議のようだった。
「ふぇ、え!? えーーっ、だっ……て、えぇーー」
いくら知らなかった時に無遠慮に撫で回していたとはいえ、黒狼の中身が皇帝陛下だと知ってしまった今、同じようにやれと言われてもそれはなかなか難しいわけで。
ましてや一緒に寝るだなんて、偽物姫の私には恐れ多くて。
セルヴィス様がそばにいるだけで、私の心臓はうるさくて。
「わっ、ちょっ……」
どうしよう、と手を出すことをためらっていた私に覆いかぶさるように柔らかな前足を持ち上げた狼が、そのまま私をベッドに倒す。
そしてすぐそばで丸まってしまった。
「本当に、一緒に寝る気ですか?」
「バウ」
静かな部屋に、肯定するような鳴き声が響き、優しげな狼の瞳が私を見つめる。
「私が、モフりたいって言ったから?」
『モフモフには中毒性があるんですよ! モフりたいんですよ!! 思いっきりっ!!』
確かにそれは、私の願望ではあったけれど。あの状況逃れるために、ただ口走っただけの内容で。
「だって、セルヴィス様は狼じゃなくて皇帝陛下で。不敬、ですし」
狼の姿だろうが、人の姿だろうが、変わりなく、いつも私の前に現れて助けてくれたのは、この人で。
『どちらかというと、仲良くしたいと思っている』
そう言ってくれた通り、セルヴィス様は言葉でも態度でも歩み寄る姿勢を見せてくれた。
「……だって、私、きっと寝相悪いし、それに寝言とか言っちゃうかもですよ?」
寝顔も見られちゃうし、と思ったけれど、それももう今更で。
だって、を言い尽くしてしまった私に、
『他に懸念事項は?』
と紺碧の瞳が私に尋ねる。
「……本当、に?」
いいんですか? とそっと指先を伸ばせば、いつも通り柔らかで手触りの良いモフモフに触れる。
全く抵抗することなく撫でられて、されるがまま側にいてくれる狼様。
「ふふっ、柔らかくてあったかい」
モフモフだぁと私が笑うとヴィーが静かに身体を寄せてきた。
自分以外の体温と誰かがいる心地よさに眠さが急にやって来て、理性を熔かす。
柔らかな毛並みに顔を埋め、ふふっと笑った私は、
「ヴィー、ありがとう。おやすみなさい」
お礼やあいさつが言えたのか分からないくらいの早さで深い眠りに落ちた。
はぁ、とため息をついた私に近づくと、お行儀よくお座りをしたセルヴィス様が、
「バゥ、バゥ」
と再度鳴いた。
「一応お尋ねしますが、そのお姿では言葉をかわすことはできないのですか?」
「バウ!」
肯定するように大きく鳴いた黒狼《ヴィー》はくるりと背を向けるとふっさふさの尻尾で私の膝をくすぐる。
「ちょっ、ふわぁぁ。モフモフがぁ」
真面目な話をしているのに、誘惑しないでくださいよっ! と抗議をすると、
「ウゥー」
不満げな声を上げた。
「……何に、そんなに怒って?」
「バゥ」
短く鳴くと撫でろとばかりに私の手に柔らかな頭を擦りつけてくる。
それはいつもの、私とヴィーとのやりとりで。
「バウバウ」
黒狼の正体がセルヴィス様だと知って、態度を改めた私への抗議のようだった。
「ふぇ、え!? えーーっ、だっ……て、えぇーー」
いくら知らなかった時に無遠慮に撫で回していたとはいえ、黒狼の中身が皇帝陛下だと知ってしまった今、同じようにやれと言われてもそれはなかなか難しいわけで。
ましてや一緒に寝るだなんて、偽物姫の私には恐れ多くて。
セルヴィス様がそばにいるだけで、私の心臓はうるさくて。
「わっ、ちょっ……」
どうしよう、と手を出すことをためらっていた私に覆いかぶさるように柔らかな前足を持ち上げた狼が、そのまま私をベッドに倒す。
そしてすぐそばで丸まってしまった。
「本当に、一緒に寝る気ですか?」
「バウ」
静かな部屋に、肯定するような鳴き声が響き、優しげな狼の瞳が私を見つめる。
「私が、モフりたいって言ったから?」
『モフモフには中毒性があるんですよ! モフりたいんですよ!! 思いっきりっ!!』
確かにそれは、私の願望ではあったけれど。あの状況逃れるために、ただ口走っただけの内容で。
「だって、セルヴィス様は狼じゃなくて皇帝陛下で。不敬、ですし」
狼の姿だろうが、人の姿だろうが、変わりなく、いつも私の前に現れて助けてくれたのは、この人で。
『どちらかというと、仲良くしたいと思っている』
そう言ってくれた通り、セルヴィス様は言葉でも態度でも歩み寄る姿勢を見せてくれた。
「……だって、私、きっと寝相悪いし、それに寝言とか言っちゃうかもですよ?」
寝顔も見られちゃうし、と思ったけれど、それももう今更で。
だって、を言い尽くしてしまった私に、
『他に懸念事項は?』
と紺碧の瞳が私に尋ねる。
「……本当、に?」
いいんですか? とそっと指先を伸ばせば、いつも通り柔らかで手触りの良いモフモフに触れる。
全く抵抗することなく撫でられて、されるがまま側にいてくれる狼様。
「ふふっ、柔らかくてあったかい」
モフモフだぁと私が笑うとヴィーが静かに身体を寄せてきた。
自分以外の体温と誰かがいる心地よさに眠さが急にやって来て、理性を熔かす。
柔らかな毛並みに顔を埋め、ふふっと笑った私は、
「ヴィー、ありがとう。おやすみなさい」
お礼やあいさつが言えたのか分からないくらいの早さで深い眠りに落ちた。