叶わぬロマンティックに終止符を
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日々はわたしを置いて忙しく過ぎてゆく。息つく暇もないまま時計の針は進むし、毎日ゆっくり香水の残量は少なくなってゆく。この一ヶ月は同じ香りに何度も出会った。
「名取さん、このデータ集約してグラフ化するのと、プロデュースチームにタレントとロゴ、諸々の権利関係確認してもらってもいいですか?」
「承知しました。権利状況については確認済みのものもあるので再度確認の上、表にまとめてチャットで周知します」
日常業務に加えて、プロジェクトの業務。仕事量は倍以上に増え、残業もマストだ。けれど、営業推進部の通常業務はいくらか芽奈に振らせてもらっているのでかなり助かっている。
部長と直接関わることが減ったのは、幾分か精神的な余裕をもたらしてくれた。自分の業務でいっぱいいっぱいのはずの芽奈が快く引き受けてくれたことも大きい。
営業推進部の仕事は、営業担当が利用する提案書や資料の作成、お客さまとのアポイント調整、営業担当者向け商品勉強会の講師など多岐にわたる。今回のプロジェクト、マイクレ(正式名称は"My♡credit"というシンプルさ)でも資料作成や社内調整が主であった。