叶わぬロマンティックに終止符を
epilogue


 ◻︎

 からっとした晴れ空が秋の訪れを感じさせる。わたしが抱えるのは白で構成された大きな花束。


 「やっぱあたし無理かも。名取がいない営推って何の価値が?」

 「まあまあ。あれからだいぶ環境もよくなったし、春田さんも戻ってきてくれたじゃない」

 「それとこれとは別よ!」


 滅多に泣き言や寂しさを表さない芽奈が今にも泣きそうな顔でわたしを見つめていた。


 「今生の別れでもないんだし、家に遊びにも来てよ?」

 「……あぁ、名取の家遊びに行けば、日永さんいるのか。それはいいことを聞いた、イケメンは目と脳にいいからね」


 ぶつぶつと納得したようにひとりごとをこぼしていく芽奈。この会社で"日永さん"といえば柊のことであり、わたしのことでもあった。社内で使う名字は名取で据え置いたけれど、一年前、確かにわたしは"日永"の名字をもらったのだ。




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