ひまわりみたいなあなたにもう一度恋をする~再会したのは元不良の同級生~

「どう?少しは慣れた?」
「はい。おかげさまで」

 後ろのデスクから声をかけられた美織はにこやかに答えた。
 青柳商事で働き始めて二週間。
 正宗の的確なフォローのおかげもあって、少しずつ新しい環境に慣れ始めたところだ。

「来週から錦は俺と同じチームで、東南アジアのマーケットを担当してもらう」
「わかりました」

 現在、青柳商事ではアジア地域に向けて、不動産やインフラ分野のマーケットに参入すべく準備を進めている。
 商社というと、海外から輸入した製品を国内に販売するというイメージがあるが、美織の所属する海外事業部では国内外の製品だけでなく、サービスやノウハウなども売り込んだりする。
 国内企業との仲介役を担い、現地の有力者と協力関係を築くのも重要な役割だ。
 言語や文化が違う諸外国を相手にするだけあって苦労も責任も大きいが、その分前職よりお給料もいい。
 申し分ない環境で仕事に励めるのは美織にとっても新鮮だった。

(あ、定時だ)

 午後六時になり今日の分の業務を終えた美織は、そそくさとノートパソコンを片付け始めた。今日は週に一度のノー残業デーらしい。美織の他にも帰り支度を始めている人が何人かいる。

(今日の夕飯はなににしようかな)

 今日の夕食当番は美織だ。
 早く帰ってスーパーに寄らなければ、目ぼしい食材が売り切れてしまう。
 頭の中で今日の献立を考えていたそのとき、トントンとデスクの端を誰かが指で叩いた。
< 13 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop