わかっていますよ旦那さま~私たちWIN-WINの夫婦ですから~

新婚生活に耐えてみせます

「依都。週末は一緒に出かけるから、そのつもりでいて」

「ど、どこに?」

 光毅さんと会話をしている私は今、背後から彼に抱きしめられながらソファーに座っている。まったく落ち着かない!

 彼と結婚して一週間。休日の今日は、朝食後すぐに捕まってこのスタイルで過ごす羽目になっている。

 自宅に一緒にいるときの光毅さんは、よく私にくっついてくる。それは少し以外だが、平日の帰宅後も同じような感じだし、これが彼の好みなのだろう。

 こちらとしては、恥ずかしくてたまらない。なんとか抜けだそうともがいたが、光毅さんがそれを許してくれない。もはやあきらめの境地だが、慣れる気がまったくしない。

「福岡だ」

「どうして?」

 急な誘いの意図がわからず、質問ばかりになる。

「すでに結婚はしたが、式は糸貫庵の件が落ち着いてからと決めただろ? 新婚旅行だって、長い休みが取れないから後回しになっている」

 そう言いながら彼が私の髪にするりと頬を寄せるから、もともと騒がしかった鼓動がひと際大きく跳ねた。

「まあ、それについては俺が悪いんだが。せめて、週末にデートをしようと思ったんだよ」

 実家の温泉街で彼を何度も見かけたし、仕事は当然それだけではない。社長ともなれば、とにかく多忙の身なのだろう。

 私との結婚の理由を考えたらそういう気遣いは不要だし、仕事のないときくらいきちんと体を休めてほしい。

「福岡……」

 それにしてもずいぶん壮大なデートだと、遠い目をしながら今日までの怒涛の二週間を思い出していた。
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