長すぎた春に、別れを告げたら
ずっと一緒にいよう
◇　◇　◇

「にゃ～？」

相良さんのマンションで荷物をまとめていたら、メルくんが私の前にやって来て首をかしげた。

どうしたの？とでも言っているみたいだ。

私は彼がさとみさんを送って帰宅する前にここを出ると決めた。

さとみさんに対して申し訳ない気持ち、後ろめたさ。それから、これ以上彼を好きになる前に離れたいという自己防衛本能。今ならまだ間に合うかもれない。

彼は親切にしてくれただけで、私のことなんてなんとも思っていない。私がひとりで舞い上がっていただけなのだ。

「メルくん、今までありがとうね」

お礼を言って部屋を出ようとしたとき、彼が帰ってきた。

「あ……」

リビングで鉢合わせた私は目を泳がせる。

一歩遅かったようだ。

「その荷物……まさか、今から戻る気ですか？」

「……はい。お世話になりました」

頭を下げると、彼は戸惑いを浮かべる。

「急にどうして……」

心底わけがわからないといった様子の彼が少しだけ憎らしい。私は彼に彼女がいるのを知って同居を続けられるほど非常識じゃない。万が一彼女が認めているとしても、自分がされたくないことはしたくなかった。
< 45 / 54 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop