エナはマーメイドの仕立屋さん~はじめてのお仕事はプリンセスのドレス~
①
ここは小さな海の町、ランゴールド。町の人はみんなおだやかに仲良く暮らしています。
今日10歳になったエナもこの町に住む明るい女の子。
エナはおばあちゃんっ子で、今日も朝からおばあちゃんのお店に行くために家をでました。
エナのおばあちゃんはかわいいお洋服をつくることで有名な仕立屋さん。
エナもおばあちゃんによくお洋服をつくってもらいます。
今日着ているピンクのフリルのキャミソールもおばあちゃんのてづくり。
おばあちゃんにあこがれているエナも一緒にお洋服をつくったりします。
まだまだおばあちゃんみたいにはつくれませんが、エナもかわいいお洋服をつくるのが得意です。
おばあちゃんのお店は浜辺にあります。
どうして、そんなところにお店をつくったのか、それはおばあちゃんが海を愛しているからです。
エナも海は大好きです。泳ぐのも得意です。
キラキラ光る海を見ながら砂浜を歩いているとおばあちゃんのお店が見えてきました。
水色の壁と屋根をしたかわいらしいお店です。
「あれ?」
エナがとびらを開けようとノブをひっぱってみると、お店のとびらは開きませんでした。
とびらの窓から中をのぞいてみます。
お店の中におばあちゃんの姿はありません。
エナは、まただ……と思いました。
エナのおばあちゃんはふしぎなことに、よく姿を消します。
誰もおばあちゃんがどこに行っているか知りません。
こんなときは家に帰るか、待つしかないのです。
「今日の朝はいるって聞いてたんだけどなあ」
エナはお店の前の階段に座ってひとりごとを言いました。
ママはエナがおばあちゃんっ子だということを知っていて教えてくれたのです。
でも、たまたまおばあちゃんに用事ができたのかもしれません。
(帰ろうかな)
そう思ったとき、あたたかい風がひゅーっと吹いて、海の香りがしました。
顔をあげると砂浜に人が立っていました。
エナのおばあちゃんです。今日もオシャレです。
「海に入っていたの?」
エナはおばあちゃんのところへ走っていって、そう聞きました。
でも、おばあちゃんはどこも海の水でぬれていませんでした。
「散歩していただけだよ」
ニコニコと笑っておばあちゃんは言います。
エナはおかしな感じがしました。
おばあちゃんが海から上がってきたようにさっきは見えたからです。
すると、おばあちゃんは
「と言いたいところだけど、エナ、今日はあなたの10歳の誕生日ね。渡したいものがあるの」
とエナに言いました。
「サンダルを脱いで、ここに立って」
「これでいい?」
エナはおばあちゃんに言われたとおり、サンダルを脱いで海の中に足を入れて立ちました。
足首くらいに波がきます。少しあたたかな海の水がきもちいいです。
「エナ、10歳のお誕生日おめでとう。もう立派なレディね」
そう言いながらおばあちゃんはエナの首に虹色に光る貝殻のネックレスをかけました。
「わぁ!」
手で持って揺らしてみるといろいろな色に見えます。
もうこれはエナの宝物です。
「おばあちゃん、ありがとう!」
エナはキラキラとした目でおばあちゃんを見ました。
「エナ、それはヒミツのペンダントなんだよ」
「ヒミツ?」
「それには魔法がかけられているんだ」
「魔法? おばあちゃんは魔女なの?」
エナは目を丸くしました。
でも、おばあちゃんの答えは違っていました。
「ううん、おばあちゃんはね、人魚なんだ」
おばあちゃんがそう言ったとき、おばあちゃんの身体がキラリと光りました。
エナがまばたきをして、おばあちゃんを見ると、おばあちゃんは紫色の尾びれをした人魚になっていました。
ウロコがピカピカ光っています。
「すごい! ほんとうにおばあちゃんは人魚なんだ?」
「エナも貝殻を握って、人魚になれと心の中で言ってみなさい」
「うん」
ドキドキしながらエナはネックレスについた貝殻を両手で握り、心の中で「人魚になれ」と言いました。
瞬間、キラキラと自分の身体が光りだします。
「わっ」
足から尾びれに変わって、エナは水面にしりもちをつきました。
そうです。
エナの足はピンク色の立派な尾びれに変わっていたのです。
「海にもぐってエナ」
おばあちゃんに言われて、エナは海の中にもぐりました。
ピチピチの尾びれでぐんぐんもぐることができます。
「すごい! わたし、人魚になったんだ?」
隣を泳ぐおばあちゃんにエナは嬉しそうに言いました。
こんな気持ちははじめてです。
ワクワクしてドキドキして、心臓がダンスをしているみたい。
いろんな色の魚や海藻の群れ、サンゴも見えます。
息も苦しくないし、人間のときとはまわりがクリアに違って見えます。
「エナ、これはおばあちゃんとエナ、2人だけのヒミツだからね? 誰かに知られてしまったら、魔法がなくなってしまうから」
「うん、わかった!」
心配そうなおばあちゃんにエナは元気に返事をしました。
「エナったら。ほら、いく場所があるのよ、こっち」
はしゃぐエナを見ておばあちゃんはふふっと笑い、エナに手招きをしました。
今日10歳になったエナもこの町に住む明るい女の子。
エナはおばあちゃんっ子で、今日も朝からおばあちゃんのお店に行くために家をでました。
エナのおばあちゃんはかわいいお洋服をつくることで有名な仕立屋さん。
エナもおばあちゃんによくお洋服をつくってもらいます。
今日着ているピンクのフリルのキャミソールもおばあちゃんのてづくり。
おばあちゃんにあこがれているエナも一緒にお洋服をつくったりします。
まだまだおばあちゃんみたいにはつくれませんが、エナもかわいいお洋服をつくるのが得意です。
おばあちゃんのお店は浜辺にあります。
どうして、そんなところにお店をつくったのか、それはおばあちゃんが海を愛しているからです。
エナも海は大好きです。泳ぐのも得意です。
キラキラ光る海を見ながら砂浜を歩いているとおばあちゃんのお店が見えてきました。
水色の壁と屋根をしたかわいらしいお店です。
「あれ?」
エナがとびらを開けようとノブをひっぱってみると、お店のとびらは開きませんでした。
とびらの窓から中をのぞいてみます。
お店の中におばあちゃんの姿はありません。
エナは、まただ……と思いました。
エナのおばあちゃんはふしぎなことに、よく姿を消します。
誰もおばあちゃんがどこに行っているか知りません。
こんなときは家に帰るか、待つしかないのです。
「今日の朝はいるって聞いてたんだけどなあ」
エナはお店の前の階段に座ってひとりごとを言いました。
ママはエナがおばあちゃんっ子だということを知っていて教えてくれたのです。
でも、たまたまおばあちゃんに用事ができたのかもしれません。
(帰ろうかな)
そう思ったとき、あたたかい風がひゅーっと吹いて、海の香りがしました。
顔をあげると砂浜に人が立っていました。
エナのおばあちゃんです。今日もオシャレです。
「海に入っていたの?」
エナはおばあちゃんのところへ走っていって、そう聞きました。
でも、おばあちゃんはどこも海の水でぬれていませんでした。
「散歩していただけだよ」
ニコニコと笑っておばあちゃんは言います。
エナはおかしな感じがしました。
おばあちゃんが海から上がってきたようにさっきは見えたからです。
すると、おばあちゃんは
「と言いたいところだけど、エナ、今日はあなたの10歳の誕生日ね。渡したいものがあるの」
とエナに言いました。
「サンダルを脱いで、ここに立って」
「これでいい?」
エナはおばあちゃんに言われたとおり、サンダルを脱いで海の中に足を入れて立ちました。
足首くらいに波がきます。少しあたたかな海の水がきもちいいです。
「エナ、10歳のお誕生日おめでとう。もう立派なレディね」
そう言いながらおばあちゃんはエナの首に虹色に光る貝殻のネックレスをかけました。
「わぁ!」
手で持って揺らしてみるといろいろな色に見えます。
もうこれはエナの宝物です。
「おばあちゃん、ありがとう!」
エナはキラキラとした目でおばあちゃんを見ました。
「エナ、それはヒミツのペンダントなんだよ」
「ヒミツ?」
「それには魔法がかけられているんだ」
「魔法? おばあちゃんは魔女なの?」
エナは目を丸くしました。
でも、おばあちゃんの答えは違っていました。
「ううん、おばあちゃんはね、人魚なんだ」
おばあちゃんがそう言ったとき、おばあちゃんの身体がキラリと光りました。
エナがまばたきをして、おばあちゃんを見ると、おばあちゃんは紫色の尾びれをした人魚になっていました。
ウロコがピカピカ光っています。
「すごい! ほんとうにおばあちゃんは人魚なんだ?」
「エナも貝殻を握って、人魚になれと心の中で言ってみなさい」
「うん」
ドキドキしながらエナはネックレスについた貝殻を両手で握り、心の中で「人魚になれ」と言いました。
瞬間、キラキラと自分の身体が光りだします。
「わっ」
足から尾びれに変わって、エナは水面にしりもちをつきました。
そうです。
エナの足はピンク色の立派な尾びれに変わっていたのです。
「海にもぐってエナ」
おばあちゃんに言われて、エナは海の中にもぐりました。
ピチピチの尾びれでぐんぐんもぐることができます。
「すごい! わたし、人魚になったんだ?」
隣を泳ぐおばあちゃんにエナは嬉しそうに言いました。
こんな気持ちははじめてです。
ワクワクしてドキドキして、心臓がダンスをしているみたい。
いろんな色の魚や海藻の群れ、サンゴも見えます。
息も苦しくないし、人間のときとはまわりがクリアに違って見えます。
「エナ、これはおばあちゃんとエナ、2人だけのヒミツだからね? 誰かに知られてしまったら、魔法がなくなってしまうから」
「うん、わかった!」
心配そうなおばあちゃんにエナは元気に返事をしました。
「エナったら。ほら、いく場所があるのよ、こっち」
はしゃぐエナを見ておばあちゃんはふふっと笑い、エナに手招きをしました。