エナはマーメイドの仕立屋さん~はじめてのお仕事はプリンセスのドレス~
⑤
「ナナ、こっち!」
岩陰に隠れながら、エナとナナとレクシーはなんとかおばあちゃんのお店に帰ってきました。
お店のとびらを開けて、すぐ中に入ります。
「そんなにあわてて、どうしたの?」
2人と1匹がバタバタとお店に入ってきたので、おばあちゃんはびっくりした顔をしました。
でも、エナはおばあちゃんの顔を見て、すこしほっとしました。
「おばあちゃん、わたしたち、市場でなんかあやしい男の人たちに追いかけられたの!」
エナはすぐにおばあちゃんに言いました。
まだナナの手は握っています。
レクシーはこわがってエナの腕の中から離れません。
まだみんな心臓がバクバクしています。
「ええ? なにがあったの?」
おばあちゃんの大きな目がさらに大きくなります。
「わからないの。なんだったんだろうね、こわかったね、ナナ」
エナはとなりのナナに言いました。
そんなにもこわかったのでしょうか、ナナはうつむいて一言もしゃべりません。
「ナナ、大丈夫?」
心配になってエナがナナの顔を横から覗き込んだときでした。
「ごめんなさい!」
ナナが勢い良く頭を下げました。
エナもおばあちゃんもびっくりです。
「ナナ、どうしたの?」
そう聞いたのはエナです。
あの男の人魚たちはナナの知り合いだったのでしょうか。
「わたしのせいなの……」
暗い顔でナナは言いました。
市場で布を選んでいるときのナナはあんなにも明るかったのに、いまはとても心が沈んでいるようです。
「ナナのせいなんて、そんなことないでしょ?」
エナはナナのせいなんてことはないと思いました。
ぎゅっとナナの手を握り直します。
「ううん、わたしのせい。じつはわたし、この国のプリンセスなの」
「ええ!? ナナが!?」
驚いたのはエナだけではありませんでした。
おばあちゃんも驚いて作業をしていた手が止まっています。
「追いかけてきたのはわたしを守るお付きの人魚たち」
ナナが視線を上げて、とびらのほうを見ます。
外のことを心配しているようです。
そして、続けました。
「まだ誰も知らないけど、今度のパーティーでわたし、みんなの前でスピーチをしなきゃいけないの。だから、勇気の出るドレスがほしくて。このお店のお洋服は魔法がかかってるって聞いたから」
おずおずとナナはそんなことを言いました。
魔法がかかっているなんて、エナははじめて聞きました。
「おばあちゃん、そうなの?」
気になってエナはおばあちゃんにたずねます。
「そうだよ、最後に魔法の貝殻を付けるんだ」
おばあちゃんは自信満々で胸を張りました。
作業台から離れて、黄色いドレスを着ているトルソーの前に泳いでいきます。
「この胸元についているのが、このドレスのための貝殻。そのお洋服ごとの貝殻があるんだよ」
ヒラヒラの大きなレースが付いた黄色のドレスは本当にすてきです。
おばあちゃんはそのドレスの胸元を指差しました。
桜色の大きな二枚貝が付いています。
「どんな仕組みなの?」
エナは興味津々で、ナナの手を引きながらドレスに近付きました。
「貝殻を付けておまじないをかけると、いろんな効果があるんだよ。勇気が出せたり、人との縁が結ばれたり、こわいものから遠ざけてくれたり。この貝殻はこのドレスを着た人を輝かせるものなんだ」
おばあちゃんが手をかざすと貝殻が一瞬、キラリと光って見えました。
「きれい……」
ナナもプリンセスのことを忘れたみたいにドレスに夢中です。
「これは誰でもできることじゃないんだ。おばあちゃんとおばあちゃんの孫であるエナならできるけどね」
おばあちゃんはエナに向かってウインクをしました。
エナはまた自分の胸がわくわくするのを感じました。
まさか、そんな力が自分にもあるなんて、と思ったのです。
「エナ、わたしのドレス、お願いできる?」
「うん、わたし、ナナのためにがんばるよ」
「約束よ?」
「うん、約束!」
エナとナナが指切りをしたときでした。
コンコンと誰かがお店のとびらをノックしたのが聞こえました。
誰かが来たようです。
「はい」
おばあちゃんが返事をすると、とびらが開きました。
「姫様、城に帰りましょう」
あの黒服の人魚たちです。
エナとナナの場所がバレていました。
「戻らなくちゃ。エナ、お願いね」
ナナはすこし寂しそうにエナから離れ、黒服たちに守られるようにお城に帰っていきました。
ぷくぷくときれいな泡が消えてしまったような、そんな気持ちになります。
「おばあちゃん、わたし、ナナのためにすてきなドレスをつくるよ」
エナは決心して、おばあちゃんに言いました。
岩陰に隠れながら、エナとナナとレクシーはなんとかおばあちゃんのお店に帰ってきました。
お店のとびらを開けて、すぐ中に入ります。
「そんなにあわてて、どうしたの?」
2人と1匹がバタバタとお店に入ってきたので、おばあちゃんはびっくりした顔をしました。
でも、エナはおばあちゃんの顔を見て、すこしほっとしました。
「おばあちゃん、わたしたち、市場でなんかあやしい男の人たちに追いかけられたの!」
エナはすぐにおばあちゃんに言いました。
まだナナの手は握っています。
レクシーはこわがってエナの腕の中から離れません。
まだみんな心臓がバクバクしています。
「ええ? なにがあったの?」
おばあちゃんの大きな目がさらに大きくなります。
「わからないの。なんだったんだろうね、こわかったね、ナナ」
エナはとなりのナナに言いました。
そんなにもこわかったのでしょうか、ナナはうつむいて一言もしゃべりません。
「ナナ、大丈夫?」
心配になってエナがナナの顔を横から覗き込んだときでした。
「ごめんなさい!」
ナナが勢い良く頭を下げました。
エナもおばあちゃんもびっくりです。
「ナナ、どうしたの?」
そう聞いたのはエナです。
あの男の人魚たちはナナの知り合いだったのでしょうか。
「わたしのせいなの……」
暗い顔でナナは言いました。
市場で布を選んでいるときのナナはあんなにも明るかったのに、いまはとても心が沈んでいるようです。
「ナナのせいなんて、そんなことないでしょ?」
エナはナナのせいなんてことはないと思いました。
ぎゅっとナナの手を握り直します。
「ううん、わたしのせい。じつはわたし、この国のプリンセスなの」
「ええ!? ナナが!?」
驚いたのはエナだけではありませんでした。
おばあちゃんも驚いて作業をしていた手が止まっています。
「追いかけてきたのはわたしを守るお付きの人魚たち」
ナナが視線を上げて、とびらのほうを見ます。
外のことを心配しているようです。
そして、続けました。
「まだ誰も知らないけど、今度のパーティーでわたし、みんなの前でスピーチをしなきゃいけないの。だから、勇気の出るドレスがほしくて。このお店のお洋服は魔法がかかってるって聞いたから」
おずおずとナナはそんなことを言いました。
魔法がかかっているなんて、エナははじめて聞きました。
「おばあちゃん、そうなの?」
気になってエナはおばあちゃんにたずねます。
「そうだよ、最後に魔法の貝殻を付けるんだ」
おばあちゃんは自信満々で胸を張りました。
作業台から離れて、黄色いドレスを着ているトルソーの前に泳いでいきます。
「この胸元についているのが、このドレスのための貝殻。そのお洋服ごとの貝殻があるんだよ」
ヒラヒラの大きなレースが付いた黄色のドレスは本当にすてきです。
おばあちゃんはそのドレスの胸元を指差しました。
桜色の大きな二枚貝が付いています。
「どんな仕組みなの?」
エナは興味津々で、ナナの手を引きながらドレスに近付きました。
「貝殻を付けておまじないをかけると、いろんな効果があるんだよ。勇気が出せたり、人との縁が結ばれたり、こわいものから遠ざけてくれたり。この貝殻はこのドレスを着た人を輝かせるものなんだ」
おばあちゃんが手をかざすと貝殻が一瞬、キラリと光って見えました。
「きれい……」
ナナもプリンセスのことを忘れたみたいにドレスに夢中です。
「これは誰でもできることじゃないんだ。おばあちゃんとおばあちゃんの孫であるエナならできるけどね」
おばあちゃんはエナに向かってウインクをしました。
エナはまた自分の胸がわくわくするのを感じました。
まさか、そんな力が自分にもあるなんて、と思ったのです。
「エナ、わたしのドレス、お願いできる?」
「うん、わたし、ナナのためにがんばるよ」
「約束よ?」
「うん、約束!」
エナとナナが指切りをしたときでした。
コンコンと誰かがお店のとびらをノックしたのが聞こえました。
誰かが来たようです。
「はい」
おばあちゃんが返事をすると、とびらが開きました。
「姫様、城に帰りましょう」
あの黒服の人魚たちです。
エナとナナの場所がバレていました。
「戻らなくちゃ。エナ、お願いね」
ナナはすこし寂しそうにエナから離れ、黒服たちに守られるようにお城に帰っていきました。
ぷくぷくときれいな泡が消えてしまったような、そんな気持ちになります。
「おばあちゃん、わたし、ナナのためにすてきなドレスをつくるよ」
エナは決心して、おばあちゃんに言いました。