社長、社内恋愛は禁止のはずですが

第6章 溺愛のはじまり

数日後、私は直哉さんに呼び出された。

「まずは第一稿、お疲れ様。」

差し出された手を、私は両手でぎゅっと握り返す。

「ありがとうございます。」

「先方に送ったら、ブラッシュアップを要求された。」

そう言って差し出された企画書には、ところどころ付箋が貼られていた。

「こ、こんなにですか……」

自信が揺らぐ。まるでダメ出しの嵐じゃないの?

そんな私の顔を見て、直哉さんはふっと笑った。

「いや、これはいい線いってる証拠だ。」

「えっ?」

「相手がブラッシュアップを求めてくるってことは、ほぼ決まりってことだ。もし駄目なら、修正するまでもなく落とされてる。」

その説明に、胸の奥がじんわりと温かくなった。

「……よかった。」

思わず頬が緩む。

「やっぱりすごいな、水城。」

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