社長、社内恋愛は禁止のはずですが

第10章 永遠の約束

直哉さんに「おめかしして」と言われたその日、私は少し迷った末に白のカットソーと花柄のスカートを選んだ。

大人しいけれど華やかさもあって、普段の私には少しだけ特別な装い。

最後に彼から贈られた香水を手首にのせ、胸元にひと吹き。

「これでいいかな」と鏡を見つめた瞬間、寝室のドアが開いた。

直哉さんが立ち止まり、驚いたように息をのむ。

「どう?おかしくない?」

恐る恐る聞くと、彼は微笑んで首を振った。

「素敵だよ、遥香。」

その一言に胸がじんと熱くなる。

高級な服ではなくても、彼にそう言ってもらえるだけで十分だった。

纏った香りに気づいた直哉さんは「俺が選んだのに、君がつけると全然違うな」と囁き、そっと髪に触れた。

鼓動が早まる。

手を取られて歩き出す瞬間、私は確信した。

今日のデートは、特別な記憶になる。
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