社長、社内恋愛は禁止のはずですが

第4章 御曹司の横顔

水曜日。突然、高峰社長に呼び出された。

「水城、ちょっと来い。」

普段は滅多に社員を招かない社長室。

緊張で足が震えながら扉を開けると、そこには書類も手につかない様子の社長が立っていた。

「何でしょうか。」

恐る恐る問いかけた瞬間、ぐっと腕を掴まれ、引き寄せられる。

「お、お願いがある。」

至近距離で見つめられ、息が止まる。

社長のお願いだなんて……はっ!もしかして、ここで「キスして欲しい」とか!? 頭の中が一気に真っ赤になる。

「週末のパーティーに、同行して欲しいんだ。」

「……えっ?」

御曹司・高峰直哉が出席する、あの社交パーティーに同行!?

頭の中で社交界の煌びやかな景色が浮かび、現実感がなくなる。

「それは普通、秘書の方が行くのでは?」

思ったことを口にすると、社長の眉がぴくりと動いた。
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