いきなりママになりました
迷いと不安と
青葉と結婚して三カ月余りが過ぎた。
望との関係は良好。青葉とはまだ夫婦とは程遠いが、積み重ねてきた時間があり、はたから見たらそれなりに家族に見えるようになっただろう。
しかしこの頃、莉乃はふと考えてしまうときがある。
望の母親役は自分でよかったのだろうか。
そう悩むようになったきっかけは、四日前に出会った由佳の存在である。
彼女は望の扱いがうまく、なにより望は彼女に懐いている様子だった。おそらく青葉が望を引き取った頃からずっと、間近で接してきたのだろう。青葉と親しいのは目に見えて明らかだった。
大学時代の友人ということは、もう十年来の付き合いだ。莉乃より青葉をよく知り、彼の考えや癖までも自然に理解しているようだった。まるで言葉を交わさなくても通じ合える関係のよう。
莉乃は気づかぬうちに、胸の奥に小さな棘が刺さったような気持ちになっていた。
ふたりの間に流れる空気は、莉乃の知らない歴史が積み重なったもの。そこに入り込む余地などないようにすら感じられる。
望がうれしそうに由佳と話すのを見て、息苦しかった。自分がどこか場違いなのではないか、もしかするとこの役割は彼女のほうが適しているのではないか。そんな思いが、ふと心の隙間に入り込んでくる。