いきなりママになりました
夜明けの訪問者


 朝の光がカーテンの隙間からやわらかく差し込み、寝室を淡い金色に染めていた。

 莉乃はゆっくりと目を開け、シーツのぬくもりと青葉の匂いがまだ肌に残っているのを感じた。体は昨夜の熱と濃密な時間の名残にほのかに重く、心地よい疲労感に包まれている。

 隣を見ると青葉はまだ静かに眠っており、規則正しい呼吸が彼の胸を静かに上下させる。朝日が穏やかな顔を照らしていた。

 莉乃はそっと体を起こしてシーツを胸元まで引き上げながら、青葉の寝顔をじっと眺めた。心の中で昨夜の激しい瞬間と、夫婦未満の曖昧な関係性が交錯する。

 昨夜はたまたま。きっともうあんな夜は訪れないだろう。
 青葉とひとつになれた悦びと、これきりという寂しさの狭間で心が揺れる。

 そっと手を伸ばして髪に触れると、青葉は身じろぎをしながら目を開けた。咄嗟に手を引っ込める。


 「……おはよう」


 かすれた声がやけに色っぽくて、莉乃の心臓を跳ね上がらせる。
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