いきなりママになりました
大きな決断を下すとき
青葉の告白を聞いてからというもの、莉乃の頭の中でその言葉がずっとぐるぐる回っている。まるで消えないテロップみたいに、どこを見てもそれが脳裏に浮かんでしまうのだ。
大学時代の友人、中里若奈に誘われ、ランチタイムに会社近くのカフェにやって来た莉乃は心ここにあらず。先ほどから思考は明後日の方角に飛行中だ。ちなみにここへは、若奈と親しくしている航希も同行している。
「……で、莉乃? 聞いてる?」
向かいに座る若奈が手をひらひらさせ、ショートボブの髪を耳にかけて莉乃の顔を覗き込む。
目の前には延々とフォークに巻きつけたせいで、ブロッコリーとベーコンのパスタが塊になっていた。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」
慌ててフォークを逆回転させてパスタを解く。
昨日までの雨模様が一転、今日は久しぶりの晴れ間だ。日差しが射し込むログハウス風の店内は、多くのお客で賑わっている。
「朝からずっとこうなんですよ、若奈さん」
隣に座る航希は呆れたように肩を竦めた。