温厚専務の秘密 甘く強引な溺愛

エピローグ

真夏の陽射しが降り注ぐ浜辺に、波の音と子どもの笑い声が響いていた。

「お父さん、こっち!」
裸足で駆ける小さな男の子、海吾が砂を蹴り上げながら圭吾を呼ぶ。
圭吾も靴を脱ぎ捨て、子どものように笑いながら追いかけていく。

その少し後ろを、波瑠が歩いていた。
腕の中には、まだ幼い娘・美波。
母の胸に抱かれた少女は、きらきら光る海を見つめて、小さな手を伸ばしている。

「もう、二人とも……」
波瑠は微笑みながら、砂浜に広がる家族の姿を見守った。

あの日から、毎年の夏に家族は周防大島を訪れている。
父と過ごした思い出の場所が、いまは家族四人の宝物になった。

陽に照らされた笑顔が海面に映り込み、まるで海そのものが祝福しているようだった。
波瑠は深く息を吸い、そっとつぶやく。

「……幸せだわ」

潮風がやさしく頬を撫で、未来へ続く笑い声が空へと溶けていった。

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