皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません

第2章 今まで通り

私の仕事は庭師だ。

しかも──あのヴィックが暮らしている、この広大な宮殿の庭を任されている。

「アンヌ、もう少し上だ。」

「はい、おじいちゃん。」

脚立の上で枝を切り落とすと、祖父がさらに指示を出す。

「あと少し上だな。」

「はい……」

けれど、それ以上となると立ち上がらなければ届かない。

迷いながらも体を起こそうとした、その時だった。

「アンヌ、無理をするな。」

祖父の低い声が飛び、私は思わず動きを止めた。

言葉に逆らえず、再び腰を下ろす。

脚立の上で小さく息をつき、悔しさが胸に広がった。

もっと役に立ちたいのに、まだ子ども扱いされているようで……。

けれど同時に、心のどこかで理解していた。

ここはただの庭ではない。

皇帝の住まう宮殿の庭──気を抜けば命取りになる、特別な場所なのだ。
< 14 / 100 >

この作品をシェア

pagetop