皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません

第5章 君しかいない

翌日。

私はお母さんの言葉を胸に、ヴィックのもとへ向かった。

手には、彼のお母さんが摘んでくれたバラの花を抱えて。

「ヴィック。」

「ああ、アンヌ。」

扉を開けると、彼はすぐに立ち上がり、迎えてくれた。

「はい、バラの花。」

「ありがとう。少し待っていてね、アンヌ」

その言葉通り、ヴィックは自ら花瓶を取り出し、一本一本、丁寧に花を挿していく。

その姿に胸が熱くなる。

──愛を知る人。こんなにも人を大切にできる人が、この国の皇帝になるのだ。

きっと国は幸せに違いない。

花を生け終えた彼は、再び私の前に戻ってきた。

そして、まるで宝物を扱うように視線を向けてくれる。

「さて……今日は、何から話そうか。」

どんな時でも、私との時間を大切にしてくれる。

その優しさが、胸いっぱいに広がっていった。
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