皇帝になった幼馴染みの溺愛が止まりません

第6章 正式に

それから私は庭師を辞め、宮殿で暮らすことになった。

おじいちゃんに打ち明けると、「いつでも戻ってきていいから、思い切りやって来い」と笑ってくれた。

その言葉に背中を押され、私は小さなトランクに身の回りの物を詰め、宮殿へ向かった。

部屋は、ヴィックと同じ四階の奥。

新しい生活が、ここから始まる。

「今日から、よろしくお願いします」

緊張しながら頭を下げると、イーヴは私を冷ややかに見下ろした。

「相変わらず田舎臭い格好ですね。部屋にドレスを用意してあります。それに着替えてください。」

「はい……」

胸がちくりと痛んだ。

まだ“皇妃候補”として認められていないのだと突きつけられた気がする。

その時──イーヴの影から温かな笑顔が現れた。

「カトリーヌさん!」

「来たね、アンヌ」

思わず声が弾む。

幼い頃から知っている女中頭の姿に、心が救われた。

けれど、イーヴの咳払いがすぐに現実へと引き戻す。

……これからが本当の試練なのだ。
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