Secret love.
Epilogue
1年後の30歳の春。

待合室でメイクを終わらせて純白のドレスに身を包んだ状態で座って呼ばれるのを待っていた。

当然試着の時に気に入ったドレスを選んだのだから今見ても綺麗で気に入っているに決まっているのだけど、ようやく着られて嬉しいはずなのに胃が痛くて仕方がなかった。

大勢の方に来てもらってるのも緊張の1つだけど、それ以上に緊張の理由になっているのは歩くんだった。

落ち着かなくなってきて立ち上がると、そのタイミングで待合室のノックが鳴る。


「どうぞ。」

「優花?どう?って、うわ、めちゃくちゃ綺麗!」


そう言って入ってきたのは実季で、実季を見た瞬間安心して泣きそうになった。


「待って!泣くな!メイク崩れる!」

「そう、だよね!」


泣きそうになるのをぐっとこらえると実季は苦笑いして、テーブルの上のティッシュで零れそうになっている涙を優しく拭きとってくれた。


「何で世界で一番幸せなはずの花嫁が泣きそうになってるの?」

「緊張してきちゃって…。やばい…、今日私綺麗!?」

「…口裂け女みたいな言葉出てきてるけど、間違いなく綺麗だから安心して。及川くんも笑えないわよ。振り返ったら口裂け女居たとか。」

「揶揄わないでよ…!結構本気で怖いんだから!」

「いや…、どんな優花を見ても可愛いって言う男性なんだし大丈夫でしょ。」


実季に慰められながらも大きな立鏡の前でもう一度自分の姿を確認する。
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