冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──

第2章 初夜

アルベール皇子は、ただ黙って私を見つめていた。

その眼差しは鋭くもあり、同時に揺らいでいるようにも見える。

耐えきれず、私は一歩踏み出した。

「お願いです……他の女ではなく、私を抱いてください。」

声が震え、涙が頬を伝う。

それでも殿下は答えない。沈黙の中でただ、深く私を見つめ続けていた。

胸が締め付けられる。

「なにか……おっしゃってください。でないと私……」

苦しさに喉が詰まり、思わず胸を押さえる。

「胸が……張り裂けそうです……」

その時、アルベール皇子が静かに立ち上がった。

重い足音が近づき、目の前にその姿が迫る。

伸ばされた手が、そっと私の頬を撫でた。

「今まで夜伽をしてこなかったのは……愛なき行為が、空しかったからだ。」

「えっ……」

驚きに目を見開く。
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