君と描く最後のページ
第13章 1月17日、君の名前
冬の朝、病室に差し込む光は柔らかく、雪の白さが窓から反射して白い影を作る。
 モニターのビープ音は規則的で、胸の奥に静かな安心感を与える。

 ベッドの上でわたしは、ほんのわずかに目を開けた。
 体はまだ重く、胸の奥の痛みは残っているけれど、世界が少しずつ鮮明に見えてくる。

 隣には陽翔くんが座っていて、ベッドに添えられた手をぎゅっと握っている。
 目を伏せ、唇を震わせながらも、必死に笑顔を作ろうとしていた。

「……美桜……?」
 その声に、わたしの心がピクッと反応する。
 呼吸が少しずつ整い、意識が戻ってくる。



 千景がベッド脇にしゃがみ込み、目を潤ませながらわたしを見つめる。
「美桜……目を……開けて……!」
 声の奥には、長い間抱えてきた不安と恐怖、そして深い愛情が混ざっていた。

 お兄ちゃんも肩越しに覗き込み、手を握りながら静かに声をかける。
「美桜……よく頑張ったな……」
 涙を浮かべながらも、落ち着いた口調で、心の底から安堵しているのがわかる。



 視界に陽翔くんの顔がはっきりと映る。
 黒髪の前髪が少し目にかかり、目は潤んでいる。
 でも、その奥には、彼が抱えてきた不安と強い愛情が溢れている。

 わたしは小さく微笑み、かすかに囁く。
「……お……めでとう……陽翔……」
 声は弱く、でも心からの想いが込められていた。



 陽翔くんはその囁きに反応し、顔を覆っていた手をゆっくり下ろす。
 涙が頬を伝い、笑顔と混ざる。
「……美桜……っ!」
 手を握り返し、力強く抱き寄せようとするが、まだ体が弱っているわたしをそっと支えるだけにとどめる。

 千景も涙をこらえながら、わたしの手を握り返し、微笑む。
 その小さな温もりが、意識が薄れかけていた心に大きな安心感を与える。



 意識が完全に戻るわけではないけれど、世界は少しずつ鮮明に感じられる。
 モニターのピッピッという音、冬の光、陽翔くんの手の温もり、千景や悠斗の存在――
 すべてが心の奥で確かに生きている。

 冬の朝の光は冷たいけれど、部屋の中は愛情で満たされ、切なさよりも温かさが勝っていた。
意識が少しずつ戻り、体はまだ重いけれど、視界ははっきりしてきた。
 ベッドのそばで陽翔くんが座り、手をそっと握ってくれている。
 その温もりに、心が少しずつ安らぎを取り戻す。

「……美桜、今日は……俺の……誕生日……なんだ」
 声がかすれ、息も浅い。
 でも、目を見開き、少し笑みを浮かべて言う。

 わたしは小さく笑い、かすかに首を傾げる。
「……知ってる……だから……」
 言葉は弱くても、心からの思いを込める。
 目の前の黒髪と黒い瞳が、まっすぐに自分を見つめているのを感じる。



 陽翔くんは少し照れたように、でも確かに嬉しそうに目を細める。
「……ありがとう……美桜……」
 その声に、胸が熱くなる。
 体はまだ弱いけれど、心は少しずつ軽くなっていく。

 千景はベッド脇に座り、涙をこらえながらも微笑む。
「二人とも……よかった……」
 その声が、病室の静けさの中に、温かい光を差し込ませる。



 外の雪が窓に舞い、白い光が部屋を柔らかく照らす。
 モニターのピッピッという音が、二人の呼吸と重なり、静かで温かいリズムになる。
 手の温もり、声の響き、雪の冷たさ――すべてが心に刻まれる。

「……陽翔……」
 かすかに囁くと、彼が顔を寄せ、微笑んで頷く。
「……俺も……大好きだ、ずっと……」
 その言葉に、胸の奥がぎゅっと熱くなる。



 手を握り返し、少しだけ体を寄せる。
 体はまだ弱いけれど、心は温かさで満たされる。
 陽翔くんの息遣い、微かに震える肩、指先のぬくもり――
 そのすべてが、切なさと愛情を同時に伝えてくる。

 悠斗もそっと微笑みながら手を握る。
「美桜、無理するなよ……でも、こうして笑ってくれて嬉しい」
 その声が、胸の奥で温かく響く。



 時間はゆっくりと流れ、二人の間には言葉少なに、でも深い信頼と愛情が満ちていく。
 わたしは微かに笑い、息を整えながら、心の中で小さくつぶやく。
(……こうして……一緒にいられるだけで、幸せ……)

 陽翔くんがそっと手を握り返す。
「……もう、離さないから……」
 その言葉に、体の重さも痛みも少しだけ軽くなる気がした。



 窓の外の雪はまだ舞い続け、白く冷たい光が差し込む。
 病室の静けさ、モニターの音、呼吸のリズム、手の温もり、笑顔――
 すべてが一つの時間として、心に静かに刻まれる。

 冬の朝の冷たさと切なさの中で、二人だけの小さな奇跡が確かに存在していた。

窓の外には雪が舞い続け、白く光る景色が病室を柔らかく照らしている。
 モニターの規則的なピッピッという音が、呼吸のリズムと重なり、静かで温かい時間を生み出す。

 ベッドの上でわたしは、まだ少し体が重く、胸に痛みを感じるけれど、陽翔くんの手のぬくもりで安心できる。
 彼はベッド脇に座り、そっと手を握り返しながら微笑む。

「……美桜、今日は……俺の誕生日……でも、俺が幸せなのは……君がいてくれるからだ」
 言葉は小さくても、心の底からの想いが伝わってくる。
 わたしは微かに笑い、息を整えながら小さく囁く。
「……ありがとう……陽翔……」



 千景はベッド脇で、涙をこらえながら微笑む。
「二人とも……こうして笑ってくれて……本当に良かった……」
 その声が、病室の静けさに優しく響き渡る。

 お兄ちゃんもそっと肩越しに手を添え、微笑んで頷く。
「美桜……無理するなよ……でも、こうして笑ってくれて嬉しい」
 その声が胸に温かく染み渡り、切なさの中にも安心感が広がる。



 意識が完全に戻るわけではないけれど、心は少しずつ軽くなり、温かさで満たされる。
 陽翔くんの黒髪、潤んだ黒い瞳、微かに震える肩、指先の温もり――
 そのすべてが、切なさと愛情を同時に伝えてくれる。

「……陽翔……」
 微かに囁くと、彼はそっと顔を寄せ、優しく微笑む。
「……俺も……ずっと……大好きだ……」
 胸の奥がぎゅっと熱くなる。
 手を握り返し、わたしは少しだけ体を寄せる。



 窓の外の雪はまだ舞い続け、冬の光が柔らかく差し込む。
 病室の静けさ、モニターの音、呼吸のリズム、手の温もり、笑顔――
 すべてが一つの時間として、心に刻まれる。

 陽翔くんが小さく囁く。
「……美桜、今日は俺の誕生日……でも、君がここにいてくれることが、何よりの贈り物だ」
 その言葉に、体の痛みも、心の不安も少しだけ溶けていく。



 時間はゆっくりと流れ、二人の間には言葉少なに、でも深い信頼と愛情が満ちていく。
 わたしは微かに笑い、息を整えながら心の中でつぶやく。
(……こうして……一緒にいられるだけで……幸せ……)

 陽翔くんはそっと手を握り返し、そっと額に触れる。
「……もう、絶対に離さない」
 その言葉に、体の重さも痛みも少しだけ軽くなった気がする。



 モニターのピッピッという音、窓から差し込む雪の光、手の温もり、心臓の鼓動――
 冬の病室の静かな奇跡の中で、二人だけの小さな誕生日が確かに存在していた。

 切なさと温かさが混ざり合う中で、わたしは微かに目を閉じ、手の中の温もりに包まれたまま、静かに幸せを感じた。
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