旦那様は秘書室の向こう側で ―社内極秘溺愛契約―
第10章 公表
社内パーティーの会場は、都内の五つ星ホテルの大宴会場。
煌びやかなシャンデリアの下、役員や取引先関係者がグラスを片手に談笑している。
私は秘書課の一員として受付や席案内を手伝いながら、ずっと胸の鼓動が落ち着かなかった。
——今日、颯真さんは私たちの関係を公表する。
本当に、全員の前で。
会場の中央付近、颯真は黒のタキシードに身を包み、完璧な笑顔で来賓と会話していた。
その横顔は冷静そのもので、いつものように私と目を合わせない。
……けれど、私が視線を向けた一瞬だけ、唇の端が僅かに上がった。
パーティーも中盤に差しかかった頃。
颯真が壇上へ上がり、マイクを手にした。
会場のざわめきが徐々に静まり、視線が一斉に集まる。
「本日はご多忙の中お集まりいただき、感謝申し上げます」
いつもの低くよく通る声。
定型の挨拶かと思っていた——その時だった。
「この場をお借りして、私事ではございますが、ご報告があります」
空気が変わった。
ざわ……と小さなざわめきが広がる。
「私、篠崎颯真は、半年前に結婚いたしました」
その言葉に、会場の空気が一瞬止まる。
次いで「え……?」という声があちこちから漏れる。
「お相手は、我が社秘書課の——」
颯真の視線が、まっすぐに私をとらえた。
心臓が喉から飛び出しそうになる。
「——彩花です」
周囲の視線が一斉に私に集まる。
息が詰まりそうなほどの注目の中、颯真が壇上から降りてきて、私の前で立ち止まった。
「来い」
差し出された手。
私は震える指先でそれを取った。
彼はそのまま壇上へ私を導き、マイク越しに会場全体へ告げた。
「彼女は、私の妻です。これからは堂々と、隣に立たせていただきます」
割れるような拍手。
私は恥ずかしさと嬉しさで胸がいっぱいになり、隣の颯真を見上げた。
「……本当に、みんなの前で言いましたね」
「言っただろう。もう隠さないって」
その笑顔は、昼の冷徹な上司ではなく——
私だけが知る、甘い夫の顔だった。
煌びやかなシャンデリアの下、役員や取引先関係者がグラスを片手に談笑している。
私は秘書課の一員として受付や席案内を手伝いながら、ずっと胸の鼓動が落ち着かなかった。
——今日、颯真さんは私たちの関係を公表する。
本当に、全員の前で。
会場の中央付近、颯真は黒のタキシードに身を包み、完璧な笑顔で来賓と会話していた。
その横顔は冷静そのもので、いつものように私と目を合わせない。
……けれど、私が視線を向けた一瞬だけ、唇の端が僅かに上がった。
パーティーも中盤に差しかかった頃。
颯真が壇上へ上がり、マイクを手にした。
会場のざわめきが徐々に静まり、視線が一斉に集まる。
「本日はご多忙の中お集まりいただき、感謝申し上げます」
いつもの低くよく通る声。
定型の挨拶かと思っていた——その時だった。
「この場をお借りして、私事ではございますが、ご報告があります」
空気が変わった。
ざわ……と小さなざわめきが広がる。
「私、篠崎颯真は、半年前に結婚いたしました」
その言葉に、会場の空気が一瞬止まる。
次いで「え……?」という声があちこちから漏れる。
「お相手は、我が社秘書課の——」
颯真の視線が、まっすぐに私をとらえた。
心臓が喉から飛び出しそうになる。
「——彩花です」
周囲の視線が一斉に私に集まる。
息が詰まりそうなほどの注目の中、颯真が壇上から降りてきて、私の前で立ち止まった。
「来い」
差し出された手。
私は震える指先でそれを取った。
彼はそのまま壇上へ私を導き、マイク越しに会場全体へ告げた。
「彼女は、私の妻です。これからは堂々と、隣に立たせていただきます」
割れるような拍手。
私は恥ずかしさと嬉しさで胸がいっぱいになり、隣の颯真を見上げた。
「……本当に、みんなの前で言いましたね」
「言っただろう。もう隠さないって」
その笑顔は、昼の冷徹な上司ではなく——
私だけが知る、甘い夫の顔だった。