旦那様は秘書室の向こう側で ―社内極秘溺愛契約―
第8章 救出の夜
颯真は玲央を睨みつけたまま、私の肩を抱き寄せた。
その腕は驚くほど強く、逃げ場を失うほどだったのに、不思議と安心感しかなかった。
「行くぞ、彩花」
反論も質問も許さない声。
私はただ頷き、颯真に導かれるまま部屋を後にした。
エレベーターで一階に降りる間、二人きりになった途端——
「……怖かったか」
低く押し殺した声に、胸が詰まった。
私は小さく「はい」と呟く。
その瞬間、颯真の手が私の後頭部を支え、額と額を合わせる。
「二度と、こんな目に遭わせない」
車に乗り込むと、颯真はすぐに自宅マンションへ直行した。
無言のままリビングに入り、私をソファへ座らせる。
「説明しろ。あいつに何を言われた」
「……私を篠崎さんから奪うって」
言葉にした途端、颯真の表情が一層冷たくなった。
「やはりそうか。……俺の目の前でそんなことを言わせるわけにはいかない」
「でも……私が油断したから——」
「違う。お前は悪くない」
颯真は私の両手を包み込み、ゆっくりと指を絡めた。
「悪いのは、俺だ。お前を“隠す”ことにこだわって、余計な隙を与えた」
「……隠していたのは事情があるからじゃ——」
「その事情ごと潰す。もう二度と誰にも近づかせない」
言葉の熱に、心臓が早鐘を打つ。
次の瞬間、颯真の腕が私の背に回り、強く抱き締められた。
「彩花……お前は俺のものだ。他の誰にも渡さない」
耳元で響く声が、甘く、恐ろしいほど真剣だった。
その胸に顔を埋めながら、私はもう何も言えなくなっていた。
その腕は驚くほど強く、逃げ場を失うほどだったのに、不思議と安心感しかなかった。
「行くぞ、彩花」
反論も質問も許さない声。
私はただ頷き、颯真に導かれるまま部屋を後にした。
エレベーターで一階に降りる間、二人きりになった途端——
「……怖かったか」
低く押し殺した声に、胸が詰まった。
私は小さく「はい」と呟く。
その瞬間、颯真の手が私の後頭部を支え、額と額を合わせる。
「二度と、こんな目に遭わせない」
車に乗り込むと、颯真はすぐに自宅マンションへ直行した。
無言のままリビングに入り、私をソファへ座らせる。
「説明しろ。あいつに何を言われた」
「……私を篠崎さんから奪うって」
言葉にした途端、颯真の表情が一層冷たくなった。
「やはりそうか。……俺の目の前でそんなことを言わせるわけにはいかない」
「でも……私が油断したから——」
「違う。お前は悪くない」
颯真は私の両手を包み込み、ゆっくりと指を絡めた。
「悪いのは、俺だ。お前を“隠す”ことにこだわって、余計な隙を与えた」
「……隠していたのは事情があるからじゃ——」
「その事情ごと潰す。もう二度と誰にも近づかせない」
言葉の熱に、心臓が早鐘を打つ。
次の瞬間、颯真の腕が私の背に回り、強く抱き締められた。
「彩花……お前は俺のものだ。他の誰にも渡さない」
耳元で響く声が、甘く、恐ろしいほど真剣だった。
その胸に顔を埋めながら、私はもう何も言えなくなっていた。