恋風
◯1番

カーテンの隙間から漏れる光に起こされて

今日の始まりを知る

右往左往してようやく手をかけ

苦いコーヒーを口に含む

耳の奥で鳴るエンジン音が

僕を突き動かして


近づくほどに大きくなる波音

肌に触れてはベタつく潮風

ミラー越しに覗いていた表情

今でも鮮やかに思い出せるよ

背中に感じる太陽に

胸がきつくなって


僕が伝えたかった言葉は

潮風に乗って虚空に溶けて

二度と戻らない夏と還る

僕の中に残った魔物は

血潮を巡って訴えるよ

どうしても消せないしこりならば

いっそこのままで

毒に侵して


◯2番

茜色の布団に顔を埋める陽を恨んで

今日の終わりを待つ

縦横無尽に駆け回り傷つけて

痛むスニーカーに気を病む

影も形も無い真っさらな砂浜だけが

僕の拠り所


遠ざかるほどに伸ばしたくなる手

触れられずにかわされた右腕

水面越しに眺めていた表情

今では歪んで苦しいよ

背中に感じていた体温が

胸を締め付けて


僕が見ていたかった風景は

切り取られて誰かのものになって

二度と現れない幻と成る

僕の夢にだけ在るキミは

この海で一番綺麗だった

どうしても癒えない想いならば

いっそこのままで

泡と消えて


残像を追って捲るページ

手が止まらない

あの日キミが言ったこと

何度思い出したって痛い

僕がキミの何者にもなれないのならば

せめて(せめて)

願わせて


僕が伝えたかった言葉は

陽が沈んでも星を浮かべて

キミとずっと一緒にいる

僕の胸に留まるキミは

潮風に吹かれて笑ってるよ

どうしても忘れられないからさ

いっそこのままで

永遠に閉じ込めて


一人きりの

夜闇の海に

溺れて(溶けて)

沈んで(浮かんで)

繰り返して

次の暁が昇るまで







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