運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
第一話 魔女に転生?
「……誰だ、おまえはっ」
低く鋭い声が、闇の中へ響き渡る。
今まさに、ベッドの上で叩き起こされたかのように驚いて、彼女はぼう然と突き出された赤い光を眺めていた。
その熱く赤い光が、たいまつの炎だと気づいたときにもまだ、彼女は事態が飲み込めていなかった。
あまりの熱さに後ずさろうとすると、足がつるりと滑り、後ろにある壁に背中を打ちつけていた。同時に、炎の奥から鈍く光るものが飛んでくる。
その瞬間、バチッと小さな火花のような青白い光が弾け、カラカランと音を立てて剣が転がった。
「……今のはなんだっ」
問い詰められても、何のことかわからない。ただ手のひらが異様に冷たく、彼女は身をすくめた。
冷たい湿り気が背中を伝い、指先に触れた壁は苔に触れたようにぬるりとしている。ここはおそらく洞窟だろう。察しはついたが、どうにもわからない。さっきまで大学の階段を昇っていたのに、これは何かの冗談だろうか。
「名を名乗れ」
漆黒の瞳を冷たく光らせた男の声が、ふたたび、周囲の壁に反響する。はやく言わないか、と急かすように炎をますます近づけられ、息がつまる。
「……み、御堂……星麗奈です」
熱さから逃れるように顔を背け、やっとのことで名を告げると、男はわずかに眉を動かした。
「セレナ……だと?」
「……はい」
おそるおそるうなずくと、彼は射抜くように鋭くセレナをにらみつけた。
震えあがるほどに恐ろしい目つき。しかし、彼は息を飲むほどに美しい男だった。
自身が危険にさらされていることは直感的にわかっていても、それを忘れさせるほどに現実離れした美しさに、セレナの目は奪われた。
「人違いか。いや……」
うっすらと彼は不気味に笑むと身を引き、地面に落ちた剣を拾った。
「テオ。この娘を外へ連れ出せ」
男が後ろに控える複数の兵士に向かって命じた。
低く鋭い声が、闇の中へ響き渡る。
今まさに、ベッドの上で叩き起こされたかのように驚いて、彼女はぼう然と突き出された赤い光を眺めていた。
その熱く赤い光が、たいまつの炎だと気づいたときにもまだ、彼女は事態が飲み込めていなかった。
あまりの熱さに後ずさろうとすると、足がつるりと滑り、後ろにある壁に背中を打ちつけていた。同時に、炎の奥から鈍く光るものが飛んでくる。
その瞬間、バチッと小さな火花のような青白い光が弾け、カラカランと音を立てて剣が転がった。
「……今のはなんだっ」
問い詰められても、何のことかわからない。ただ手のひらが異様に冷たく、彼女は身をすくめた。
冷たい湿り気が背中を伝い、指先に触れた壁は苔に触れたようにぬるりとしている。ここはおそらく洞窟だろう。察しはついたが、どうにもわからない。さっきまで大学の階段を昇っていたのに、これは何かの冗談だろうか。
「名を名乗れ」
漆黒の瞳を冷たく光らせた男の声が、ふたたび、周囲の壁に反響する。はやく言わないか、と急かすように炎をますます近づけられ、息がつまる。
「……み、御堂……星麗奈です」
熱さから逃れるように顔を背け、やっとのことで名を告げると、男はわずかに眉を動かした。
「セレナ……だと?」
「……はい」
おそるおそるうなずくと、彼は射抜くように鋭くセレナをにらみつけた。
震えあがるほどに恐ろしい目つき。しかし、彼は息を飲むほどに美しい男だった。
自身が危険にさらされていることは直感的にわかっていても、それを忘れさせるほどに現実離れした美しさに、セレナの目は奪われた。
「人違いか。いや……」
うっすらと彼は不気味に笑むと身を引き、地面に落ちた剣を拾った。
「テオ。この娘を外へ連れ出せ」
男が後ろに控える複数の兵士に向かって命じた。
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