運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい
第七話 不確定な真実
***
プロポーズを受けてからの数日は、あいさつ周りに忙殺されていた。
ひときわ大変だったのは、国王王妃両陛下への謁見だった。とはいえ、両陛下は涙ぐんで、よくぞ婚約を引き受けてくれたと喜んでいた。
爵位ある父を持たず、身元もわからない娘である自身を、結界塔を守った英雄として認めてくれたことには、ひとまず、ほっとした。
連日続いた食事会。両陛下の歓待ぶりを見るにつけ、イザベラに振り回されてきたアレクにも少々同情したけれど、当の本人は、婚約したからといって何か変わるわけでもなかった。
あいかわらず、執務室にこもり切りの毎日。変化があったとすれば、執務室への出入りが許可されたことぐらいだった。
執務室の扉をそっと開けると、アレクはいつも通り机に向かっていた。書類の山に埋もれて、周囲を気づかう気配も見せない。
「アレクシス殿下……」
小さく呼ぶと、彼はやっと顔をあげて、こちらへ視線を移す。
そこでもう一つ、あきらかな変化があったのを思い出した。彼の視線が以前よりも格段に柔らかくなったのだ。まるで、思いが通じたことで肩の荷がおりたみたいに。こちらとしては、まだまだ戸惑いの中にいるのだけど。
「ずいぶん早く来たな」
「授業が楽しくて、つい。待たせてもらってもいいですか?」
「かまわない」
セレナはソファーにおとなしく腰かけた。
先日からセレナには家庭教師がつき、執務室の一角で講義が行われていた。内容は、政治学から始まり、歴史学や修辞学、魔術理論学など多岐に渡り、専門の講師がかわるがわるやってきて、王太子妃候補の教育に熱を入れていた。
プロポーズを受けてからの数日は、あいさつ周りに忙殺されていた。
ひときわ大変だったのは、国王王妃両陛下への謁見だった。とはいえ、両陛下は涙ぐんで、よくぞ婚約を引き受けてくれたと喜んでいた。
爵位ある父を持たず、身元もわからない娘である自身を、結界塔を守った英雄として認めてくれたことには、ひとまず、ほっとした。
連日続いた食事会。両陛下の歓待ぶりを見るにつけ、イザベラに振り回されてきたアレクにも少々同情したけれど、当の本人は、婚約したからといって何か変わるわけでもなかった。
あいかわらず、執務室にこもり切りの毎日。変化があったとすれば、執務室への出入りが許可されたことぐらいだった。
執務室の扉をそっと開けると、アレクはいつも通り机に向かっていた。書類の山に埋もれて、周囲を気づかう気配も見せない。
「アレクシス殿下……」
小さく呼ぶと、彼はやっと顔をあげて、こちらへ視線を移す。
そこでもう一つ、あきらかな変化があったのを思い出した。彼の視線が以前よりも格段に柔らかくなったのだ。まるで、思いが通じたことで肩の荷がおりたみたいに。こちらとしては、まだまだ戸惑いの中にいるのだけど。
「ずいぶん早く来たな」
「授業が楽しくて、つい。待たせてもらってもいいですか?」
「かまわない」
セレナはソファーにおとなしく腰かけた。
先日からセレナには家庭教師がつき、執務室の一角で講義が行われていた。内容は、政治学から始まり、歴史学や修辞学、魔術理論学など多岐に渡り、専門の講師がかわるがわるやってきて、王太子妃候補の教育に熱を入れていた。