完璧すぎる淑女は「可愛げがない」という理由で婚約破棄されました。 ~元聖女ですが、古代魔術まで極めてみました~
古代魔術を極める者
エメラルダ・ヴァインベルク侯爵令嬢は、その日、完璧な夜会の主役であった。
胸元に銀糸で刺繍された紺碧のドレスは、彼女の透き通るような白い肌を際立たせ、きりりと結い上げられた髪には、ダイヤモンドのティアラが星のように輝いている。その姿は、一輪の孤高な百合のようだと、誰もが賞賛の眼差しを向けていた。
エメラルダは、その夜会で出会うすべての人々に、完璧な淑女の振る舞いを見せた。
王国の未来を左右する要人との議論では、的確な分析力と洞察力で彼らを唸らせ、年若い令嬢たちには、優雅な微笑みで言葉をかけた。その姿は聖女にふさわしい、揺るぎないカリスマ性に満ちていた。
しかし、その夜会の主役であるはずのエメラルダの隣に、最も重要な人物__つまり婚約者である、王太子アルフォンスの姿はなかった。
アルフォンスは、エメラルダとは対照的な、控えめで可憐な令嬢__リリアーナ・グレンディールの隣にいた。彼女もまた、聖女になれる才は持っていた。ただ、エメラルダには遠く及ばないだけ。
彼は、まるで周囲の視線を気にも留めないかのように、リリアーナの小さな手を取り、彼女の顔を覗き込み、楽しそうに笑いかけている。
その様子を、エメラルダは冷静な瞳で見ていた。心臓が高鳴ることも、怒りがこみ上げてくることもない。ただ漠然と、この結末が必然であったことを悟っていた。
夜会も終盤に差し掛かった頃、アルフォンスがエメラルダのもとへ歩み寄ってきた。彼の顔には、どこか決意を秘めたような、それでいて怯えにも似た表情が浮かんでいる。
「エメラルダ。少し、話をしよう」
「はい」
誰もいないテラスへと誘われ、エメラルダは静かに彼の後を追った。月の光が降り注ぐテラスは、2人を包み込むように静まり返っていた。
「エメラルダ。僕は……君との婚約を破棄したい」
アルフォンスの言葉は、まるで氷の刃のように冷たかった。しかし、エメラルダは動じない。表情一つ変えず、ただ彼の次の言葉を待つ。
胸元に銀糸で刺繍された紺碧のドレスは、彼女の透き通るような白い肌を際立たせ、きりりと結い上げられた髪には、ダイヤモンドのティアラが星のように輝いている。その姿は、一輪の孤高な百合のようだと、誰もが賞賛の眼差しを向けていた。
エメラルダは、その夜会で出会うすべての人々に、完璧な淑女の振る舞いを見せた。
王国の未来を左右する要人との議論では、的確な分析力と洞察力で彼らを唸らせ、年若い令嬢たちには、優雅な微笑みで言葉をかけた。その姿は聖女にふさわしい、揺るぎないカリスマ性に満ちていた。
しかし、その夜会の主役であるはずのエメラルダの隣に、最も重要な人物__つまり婚約者である、王太子アルフォンスの姿はなかった。
アルフォンスは、エメラルダとは対照的な、控えめで可憐な令嬢__リリアーナ・グレンディールの隣にいた。彼女もまた、聖女になれる才は持っていた。ただ、エメラルダには遠く及ばないだけ。
彼は、まるで周囲の視線を気にも留めないかのように、リリアーナの小さな手を取り、彼女の顔を覗き込み、楽しそうに笑いかけている。
その様子を、エメラルダは冷静な瞳で見ていた。心臓が高鳴ることも、怒りがこみ上げてくることもない。ただ漠然と、この結末が必然であったことを悟っていた。
夜会も終盤に差し掛かった頃、アルフォンスがエメラルダのもとへ歩み寄ってきた。彼の顔には、どこか決意を秘めたような、それでいて怯えにも似た表情が浮かんでいる。
「エメラルダ。少し、話をしよう」
「はい」
誰もいないテラスへと誘われ、エメラルダは静かに彼の後を追った。月の光が降り注ぐテラスは、2人を包み込むように静まり返っていた。
「エメラルダ。僕は……君との婚約を破棄したい」
アルフォンスの言葉は、まるで氷の刃のように冷たかった。しかし、エメラルダは動じない。表情一つ変えず、ただ彼の次の言葉を待つ。
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