育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
10.美味しいご飯
「あ、ははは、お恥ずかしい……」
(何も今鳴らなくてもいいじゃない!)
掃除して、赤子を背負って往復6キロ歩いて、薪を割って、沐浴させるには、昼食の野菜サンドイッチでは物足りなかった。
しかしアーサーさんは少しだけ驚いたように眉を上げると、炎を指差した。
「腹が減ってるなら、これを食べるか?
ちょうど今、焼いていたんだ」
炎の中を見ると、狐色に焼き跡がついた鶏肉が棒に刺さり焼かれていた。
香ばしい香りがあたりに広がり、思わず唾液を飲み込んでしまう。
「お、おいしそう……! いいんですか?」
「ああ、燻製にして保存食にしようと思ったが、焼きたてのうちに食べたほうが美味い」
なんて優しい人なんだ。
彼は携帯していたナイフを使って手慣れた手つきで鶏肉を切り分け、皿に盛ると手渡してくれた。
「しっかり食べるといい。子供の世話は、体力を使うだろう」
もしかしたら嫌な思いをさせてしまったかな、と不安になり、
「あの……初対面なのに頼ってばかりで、ご迷惑ですよね。すみません」
としおらしく謝ったが、彼は首を横に振る。
「この程度、俺は迷惑とは思っていない。
君が空腹や疲労で倒れたら、この子が困るだろう。何かあったら、頼ってくれ」
あくまでも、子供のためだと冷静な言葉。
でもそれは、私に気を遣わせないようにする彼の優しさなのだというのが伝わった。
「……ありがとうございます」
知らない異世界で、初対面の子供をあやしていたら、たった数日だけど心が不安ですり減っていたのかもしれない。
優しいアーサーさんからの言葉に、不覚にも泣きそうになってしまった。
「ゆっくり食べたいだろう。よければ子供は俺が抱っこしているよ」
「あ、ありがとうございます」
確かに、熱々の肉汁を飛ばしてしまったら大変だ。
うとうととまどろんでいるフィオを、手を差し出してくれたアーサーさんにそっと預ける。
彼は軽々とフィオを受け取ると、その広い胸に抱き寄せた。
「ん-おいしい! ジューシーだし、塩加減も絶妙…!」
フォークに差した焼き立ての鶏肉を口に頬張ると、思わず感嘆の声が上がってしまった。
簡素な野菜サンドイッチからは取れないお肉で、体の中に力が満ちていく。
「それはよかった」
焚き火に照らされたアーサーさんは、無心でお肉を頬張る私を笑うこともなく、安心したように頷いてくれた。
そこでふと、彼の姿を見て思い立った。
「アーサーさん、子供を抱っこするの、お上手ですね」
王都の修道院では、丸一日泣き叫び、神父様もシスターも手がつけられず困り果てていたというのに。
「慈しみの抱擁」のスキルを持っているから、私の腕の中では安心して寝てくれるが。
彼の腕の中で、泣く気配どころかフィオは気持ちよさそうに微笑んでいる。
アーサーさんは言葉を探して口を開いた後、
「ーーそうかな。昔、少しな」
とだけ言って、唇を閉じた。
「ふふ!」
まどろんでいたフィオが急に満面の笑みになり、自分を抱くアーサーさんに笑いかけた。
クールな彼はじっとフィオの青い瞳を見つめていたが、フィオに合わせて、笑ったようだった。
(何も今鳴らなくてもいいじゃない!)
掃除して、赤子を背負って往復6キロ歩いて、薪を割って、沐浴させるには、昼食の野菜サンドイッチでは物足りなかった。
しかしアーサーさんは少しだけ驚いたように眉を上げると、炎を指差した。
「腹が減ってるなら、これを食べるか?
ちょうど今、焼いていたんだ」
炎の中を見ると、狐色に焼き跡がついた鶏肉が棒に刺さり焼かれていた。
香ばしい香りがあたりに広がり、思わず唾液を飲み込んでしまう。
「お、おいしそう……! いいんですか?」
「ああ、燻製にして保存食にしようと思ったが、焼きたてのうちに食べたほうが美味い」
なんて優しい人なんだ。
彼は携帯していたナイフを使って手慣れた手つきで鶏肉を切り分け、皿に盛ると手渡してくれた。
「しっかり食べるといい。子供の世話は、体力を使うだろう」
もしかしたら嫌な思いをさせてしまったかな、と不安になり、
「あの……初対面なのに頼ってばかりで、ご迷惑ですよね。すみません」
としおらしく謝ったが、彼は首を横に振る。
「この程度、俺は迷惑とは思っていない。
君が空腹や疲労で倒れたら、この子が困るだろう。何かあったら、頼ってくれ」
あくまでも、子供のためだと冷静な言葉。
でもそれは、私に気を遣わせないようにする彼の優しさなのだというのが伝わった。
「……ありがとうございます」
知らない異世界で、初対面の子供をあやしていたら、たった数日だけど心が不安ですり減っていたのかもしれない。
優しいアーサーさんからの言葉に、不覚にも泣きそうになってしまった。
「ゆっくり食べたいだろう。よければ子供は俺が抱っこしているよ」
「あ、ありがとうございます」
確かに、熱々の肉汁を飛ばしてしまったら大変だ。
うとうととまどろんでいるフィオを、手を差し出してくれたアーサーさんにそっと預ける。
彼は軽々とフィオを受け取ると、その広い胸に抱き寄せた。
「ん-おいしい! ジューシーだし、塩加減も絶妙…!」
フォークに差した焼き立ての鶏肉を口に頬張ると、思わず感嘆の声が上がってしまった。
簡素な野菜サンドイッチからは取れないお肉で、体の中に力が満ちていく。
「それはよかった」
焚き火に照らされたアーサーさんは、無心でお肉を頬張る私を笑うこともなく、安心したように頷いてくれた。
そこでふと、彼の姿を見て思い立った。
「アーサーさん、子供を抱っこするの、お上手ですね」
王都の修道院では、丸一日泣き叫び、神父様もシスターも手がつけられず困り果てていたというのに。
「慈しみの抱擁」のスキルを持っているから、私の腕の中では安心して寝てくれるが。
彼の腕の中で、泣く気配どころかフィオは気持ちよさそうに微笑んでいる。
アーサーさんは言葉を探して口を開いた後、
「ーーそうかな。昔、少しな」
とだけ言って、唇を閉じた。
「ふふ!」
まどろんでいたフィオが急に満面の笑みになり、自分を抱くアーサーさんに笑いかけた。
クールな彼はじっとフィオの青い瞳を見つめていたが、フィオに合わせて、笑ったようだった。