育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜

13.睡眠が取れてよかった

子育て中の隣人に、助言し手伝ってくれる彼の優しさに心が温まる。
 私は思わず、その整った顔立ちを見つめて、心動かされてしまったが。

(いけない、いけない! ときめいている場合じゃないわ。だって彼はきっと……)

私は心の中で自分を律する。

(こんなに子守りが上手なアーサーさんはきっと、事情があって単身赴任している、子持ちの既婚者。
 もしくは、離婚したけれど子供がいるシングルファザーよ)

二十代の若い男性が、こんなに赤ちゃんの相手が上手なのには、子育ての経験があるのに違いない!
軽々しく私が好意を抱いていい相手ではないのだ。

「……ん? どうかしたか?」

「いえ! なんでもないです!」

無言で見つめる私を訝しげに見つめ返してきたので、私は顔を赤くしながら首を横に振った。

「ばぁぁぶぅ」

コロコロと表情を変える私を見て、アーサーさんの腕の中のフィオが唇を尖らしていた。


* * *


 育児チートのスキルを使って、フィオの身の回りのお世話だけでなく、自分自身の体調管理を万全にできるのはとても助かった。

「すぅ……すぅ……」

「あら、お昼寝した。
 じゃあ今のうちに私も仮眠しよう。『≪疲労軽減≫・≪時短睡眠≫オン」

 夜泣き対応は相変わらず大変だが、フィオがお昼寝したタイミングですかさず自分も時短睡眠モードに入ると、たった30分ですっきりくっきり元気になる。

 やはり睡眠をしっかり取れていると、起きた後の家事の効率もいい。


 洗濯掃除を終わらせたタイミングでフィオが起きたので、食料がなくなってしまったので街まで買い出しに行こうと、抱っこ紐をして外へと出る。

「エレナ。今から買い出しに行くんだが、何か買いたいものがあったら代わりに買ってこようか?」

 ちょうど家を出たところのアーサーさんに声をかけられた。

 彼はよく町に買い出しに行くらしく、子守りで忙しい私に声をかけては、細々したものならお使いをしてくれるのだ。

「ありがとうございます。でも今日は、お散歩がてら私もフィオも街に行こうかなって」

「ふうぅー」

「そうか。では一緒に行こう」

 片道3キロの距離も、話し相手がいたままお散歩がてら歩いているとすぐに着く。

 おしゃべりな私が、昨日の夜はフィオがミルクいっぱい飲んだんですよーとか、このあたりに咲く花は綺麗ですね、と話しても、アーサーさんは優しく相槌を打ってくれる。
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