育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
15.甘えてばかりはいられない
辺境暮らしが始まって半月ほど経った。
最初はインフラの無さに打ちひしがれていたが、なんとか食料や火の確保の仕方を学び、幼子の育児に翻弄されながらリズムを掴めてきていた。
朝はまず井戸水を汲み、洗濯板で汚れた衣服を洗い、表に干す。
フィオをおんぶしながらでも、うまくできるようになってきた。
「おにーのパンツはいいパンツーつよいぞーつよいぞー♪」
「きゃはは!」
保育士の職業病で、子供に人気のある童謡を口ずさんでいると、背負ったフィオも笑い声をあげていた。
洗濯物を干しながら、さんさんと差す太陽の光に目を細める。
「おはよう、いい天気だな」
「おはようございます、アーサーさん」
「何か手伝うことはあるか? 買い出しをしてもいい」
「いえ、大丈夫です。これ以上アーサーさんにお手間かけるわけにはいきません。良い一日を!」
私は頭を下げると、そそくさと屋敷の中へと戻った。
「……? ああ、またな」
後ろからきょとんとした声が聞こえた。
(これ以上甘えてはいけないわ。彼には彼の生活があるし、迷惑をかけられない)
それよりなにより、甘えきってしまい、心が持っていかれそうになるから。
私は、自分でできることは自分でしようと自制し、部屋に入って頷く。
おんぶしていたフィオをベッドに下ろし、掃除を始めた。
* * *
「ふう……ちょっとひと休憩しようかな」
フィオがお昼寝したら、午前の仕事は終わりという感覚だ。今のうちに自分の仮眠や食事を取ろう。
私は抱っこして凝った肩を回しながら、紅茶でも淹れようと鍋を火にかける。
時間はかかるが、自分でも火打ち石を使い火を起こすことができるようになった。
棚に置いてあったアンティーク調のお洒落なティーポットに、同じく準備してあった茶葉を淹れ、お湯を注ぐ。
カップに入れると、甘く芳醇な香りが広がる。
一口飲むと、すーっと疲れが引いていく気がした。
(貴重なこの時間、たまらないわね……)
子供がようやく寝てくれて、温かいものを口にできる時間なんて、子育て中の人からしたらとても貴重で大事な数分だ。
紅茶を飲みながら、ここだけ見ればとても素敵なスローライフだなぁ、と、窓から降り注ぐ陽の光を見つめ穏やかな気持ちに満たされていた。
しかし、そんな癒しの時間を壊す音が響いた。
パリンッ。
「―――?」
ティーカップをテーブルに置き、音がした方へと向かう。
何か食器が割れたような音だったと辺りを見回すと、食器棚に置いてある、木苺柄の上品なティーカップが真っ二つに割れていた。
しかし、奇妙だ。
棚から床に落ちて割れてしまったならともかく、棚の中に置かれた状態のまま、綺麗に二つに割れているのだから。
「急に割れるなんて……。 古い食器で劣化したのかな」
カップの持ち手を持ち上げて見ても、断面は綺麗だ。
少し不気味に思いながら、破片で怪我をしないように片づけようと思ったら、
ガタッ、ガタガタッ。
まるで突風が吹いたかの如く、居間の窓がきしむ音が響く。
すると電灯もチカチカと点滅し、部屋が暗くなったり明るくなったりと、不自然に光りだす。
最初はインフラの無さに打ちひしがれていたが、なんとか食料や火の確保の仕方を学び、幼子の育児に翻弄されながらリズムを掴めてきていた。
朝はまず井戸水を汲み、洗濯板で汚れた衣服を洗い、表に干す。
フィオをおんぶしながらでも、うまくできるようになってきた。
「おにーのパンツはいいパンツーつよいぞーつよいぞー♪」
「きゃはは!」
保育士の職業病で、子供に人気のある童謡を口ずさんでいると、背負ったフィオも笑い声をあげていた。
洗濯物を干しながら、さんさんと差す太陽の光に目を細める。
「おはよう、いい天気だな」
「おはようございます、アーサーさん」
「何か手伝うことはあるか? 買い出しをしてもいい」
「いえ、大丈夫です。これ以上アーサーさんにお手間かけるわけにはいきません。良い一日を!」
私は頭を下げると、そそくさと屋敷の中へと戻った。
「……? ああ、またな」
後ろからきょとんとした声が聞こえた。
(これ以上甘えてはいけないわ。彼には彼の生活があるし、迷惑をかけられない)
それよりなにより、甘えきってしまい、心が持っていかれそうになるから。
私は、自分でできることは自分でしようと自制し、部屋に入って頷く。
おんぶしていたフィオをベッドに下ろし、掃除を始めた。
* * *
「ふう……ちょっとひと休憩しようかな」
フィオがお昼寝したら、午前の仕事は終わりという感覚だ。今のうちに自分の仮眠や食事を取ろう。
私は抱っこして凝った肩を回しながら、紅茶でも淹れようと鍋を火にかける。
時間はかかるが、自分でも火打ち石を使い火を起こすことができるようになった。
棚に置いてあったアンティーク調のお洒落なティーポットに、同じく準備してあった茶葉を淹れ、お湯を注ぐ。
カップに入れると、甘く芳醇な香りが広がる。
一口飲むと、すーっと疲れが引いていく気がした。
(貴重なこの時間、たまらないわね……)
子供がようやく寝てくれて、温かいものを口にできる時間なんて、子育て中の人からしたらとても貴重で大事な数分だ。
紅茶を飲みながら、ここだけ見ればとても素敵なスローライフだなぁ、と、窓から降り注ぐ陽の光を見つめ穏やかな気持ちに満たされていた。
しかし、そんな癒しの時間を壊す音が響いた。
パリンッ。
「―――?」
ティーカップをテーブルに置き、音がした方へと向かう。
何か食器が割れたような音だったと辺りを見回すと、食器棚に置いてある、木苺柄の上品なティーカップが真っ二つに割れていた。
しかし、奇妙だ。
棚から床に落ちて割れてしまったならともかく、棚の中に置かれた状態のまま、綺麗に二つに割れているのだから。
「急に割れるなんて……。 古い食器で劣化したのかな」
カップの持ち手を持ち上げて見ても、断面は綺麗だ。
少し不気味に思いながら、破片で怪我をしないように片づけようと思ったら、
ガタッ、ガタガタッ。
まるで突風が吹いたかの如く、居間の窓がきしむ音が響く。
すると電灯もチカチカと点滅し、部屋が暗くなったり明るくなったりと、不自然に光りだす。