育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
17.一件落着?
不可解な異常現象も、アーサーさんの咄嗟の機転によって一件落着した。
割れた部屋の窓は、彼が応急処置として木の板を釘で打ち、雨風が入らないようにしてくれた。
その間私は床に散らばったガラスを箒で集め、怪我をしないように破片をまとめておいた。
ガラス窓ではなく木で塞いだため、日の光が入らず、部屋の中が薄暗くなってしまったので、まだ昼過ぎだがランタンをつける。
この前街に行き、油を買っておいたのが功を奏したようだ。
フィオは落ち着いていたが、まだ熱が下がったわけではない。頬は赤くほてっていて、息は荒く、見ているだけで心が痛む。
掃除をした部屋の中で、私はため息をつく。汗をかいたほうがすぐに熱が下がるはずだと、一枚多くフィオにブランケットをかけてあげた。
「薬草をすり潰してお湯で溶いた。これを飲ませると少し楽になるだろう」
アーサーさんがすりこぎで薬草を擦り、熱冷ましの薬を作ってくれた。
私はフーフーと息を吹きそれを冷ますと、フィオを抱っこし、ゆっくりとスプーンを口元に持っていく。
「はいフィオ、お薬飲もうね」
「ふぇぇ…えん…」
一口飲んだら苦そうにくしゃくしゃに顔を顰めるフィオが、いじらしくて笑ってしまった。
「苦いよね、でも飲んだらお熱とバイバイできるよ。そう、いいこいいこ」
嫌がりながらも、ちびちびとスプーンの中の薬を飲んだフィオの背中を撫で、優しくベッドに寝かせる。
しっかりとお薬を飲ませて、背中をトントンしゲップを出させた後、またベッドに寝かせる。
「スキルの中に、フィオの熱を下げる能力はないの?」
『申し訳ございません、そのような能力はありません』
視界の端に開いたウィンドウには、無情な文言だけ書かれていて、肩を落とす。
「うーん、せっかくの育児チート能力も、フィオの体調不良を治すことはできないのね」
ずっと気を張っていたため、椅子に座るとどっと疲れが襲いかかってくる気がする。
「治癒や状態異常の回復は聖女の力だからな、できなくても仕方がない」
スキルに詳しいアーサーさんは、私の嘆きに相槌を打ってくれる。
あくまでも【慈しみの抱擁】は、『育児』に特化しているだけなのだ。
普段はとても便利なのだけれど、辛そうにしているフィオを前にしたら、何もできないことを歯痒く感じてしまう。
「さっきの出来事は、フィオの『魔力の暴走』だったんですか?」
「ああ。生まれた時から多大なる魔力を備えている血筋の子供に、稀に起こるんだ。普段は無意識のうちに魔力を体の中に包括しているのだが、体調不良や、精神的なプレッシャーを感じると、魔力が暴走し、周りに影響を与えてしまう」
椅子に座ったアーサーさんが、落ち着いた声で語る。
「大人は辛いことがあっても、泣いたり叫んだりするのを我慢できるが、子供はそれをできないだろう。
感情のコントロールは、魔力のコントロールとも繋がっている」
「なるほど」
わかりやすい説明をしてくれて、とても助かる。
確かに、感情を抑えられない子供に魔力のコントロールは難しいのかもしれない。
フィオはまだ赤ちゃんだけれど魔力を多く備えていて、それゆえに体調やメンタルを崩すととんでもないことになる、ということか。
割れた部屋の窓は、彼が応急処置として木の板を釘で打ち、雨風が入らないようにしてくれた。
その間私は床に散らばったガラスを箒で集め、怪我をしないように破片をまとめておいた。
ガラス窓ではなく木で塞いだため、日の光が入らず、部屋の中が薄暗くなってしまったので、まだ昼過ぎだがランタンをつける。
この前街に行き、油を買っておいたのが功を奏したようだ。
フィオは落ち着いていたが、まだ熱が下がったわけではない。頬は赤くほてっていて、息は荒く、見ているだけで心が痛む。
掃除をした部屋の中で、私はため息をつく。汗をかいたほうがすぐに熱が下がるはずだと、一枚多くフィオにブランケットをかけてあげた。
「薬草をすり潰してお湯で溶いた。これを飲ませると少し楽になるだろう」
アーサーさんがすりこぎで薬草を擦り、熱冷ましの薬を作ってくれた。
私はフーフーと息を吹きそれを冷ますと、フィオを抱っこし、ゆっくりとスプーンを口元に持っていく。
「はいフィオ、お薬飲もうね」
「ふぇぇ…えん…」
一口飲んだら苦そうにくしゃくしゃに顔を顰めるフィオが、いじらしくて笑ってしまった。
「苦いよね、でも飲んだらお熱とバイバイできるよ。そう、いいこいいこ」
嫌がりながらも、ちびちびとスプーンの中の薬を飲んだフィオの背中を撫で、優しくベッドに寝かせる。
しっかりとお薬を飲ませて、背中をトントンしゲップを出させた後、またベッドに寝かせる。
「スキルの中に、フィオの熱を下げる能力はないの?」
『申し訳ございません、そのような能力はありません』
視界の端に開いたウィンドウには、無情な文言だけ書かれていて、肩を落とす。
「うーん、せっかくの育児チート能力も、フィオの体調不良を治すことはできないのね」
ずっと気を張っていたため、椅子に座るとどっと疲れが襲いかかってくる気がする。
「治癒や状態異常の回復は聖女の力だからな、できなくても仕方がない」
スキルに詳しいアーサーさんは、私の嘆きに相槌を打ってくれる。
あくまでも【慈しみの抱擁】は、『育児』に特化しているだけなのだ。
普段はとても便利なのだけれど、辛そうにしているフィオを前にしたら、何もできないことを歯痒く感じてしまう。
「さっきの出来事は、フィオの『魔力の暴走』だったんですか?」
「ああ。生まれた時から多大なる魔力を備えている血筋の子供に、稀に起こるんだ。普段は無意識のうちに魔力を体の中に包括しているのだが、体調不良や、精神的なプレッシャーを感じると、魔力が暴走し、周りに影響を与えてしまう」
椅子に座ったアーサーさんが、落ち着いた声で語る。
「大人は辛いことがあっても、泣いたり叫んだりするのを我慢できるが、子供はそれをできないだろう。
感情のコントロールは、魔力のコントロールとも繋がっている」
「なるほど」
わかりやすい説明をしてくれて、とても助かる。
確かに、感情を抑えられない子供に魔力のコントロールは難しいのかもしれない。
フィオはまだ赤ちゃんだけれど魔力を多く備えていて、それゆえに体調やメンタルを崩すととんでもないことになる、ということか。