育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
20.看病したら
「んん……っ」
声を潜めてはいたが、私の声と拍手でアーサーさんが起きてしまった。
眉間に皺を寄せ、寝起きの虚ろな瞳で辺りを見渡し、ここが自分の家ではなく私の屋敷で、フィオの看病をしていたことを思い出したようである。
「ふわぁ……おはよう、エレナ」
「おはようございます、起こしてしまってすみません」
「いや平気だ。フィオの熱は下がったか?」
目をこすっているアーサーさんは寝起きでも優しい。しかし興奮冷めやらぬ私は、そんな彼に喜びを伝える。
「おかげさまで熱は下がりました。さらに! たった今寝返りしたんですよー!」
「え?」
アーサーさんは予想外の返答に少し驚いた顔をし、手招きをする私の方へと向かって立ち上がった。
両腕で体を支え、必死に首を上げているフィオが、一晩中看病をしてくれた銀髪の青年に向かって、にこっと微笑んだ。まるで自分の寝返りした姿を見てほしいかのように。
「すごいな、自分でこの体勢になったのか?」
「そうなんですよ、ゴロンって頑張って寝がえり打ったんです!」
「ううー!」
フィオはそこで力尽きたのか、うつ伏せで首を持ち上げるのを止めて、もちもちのほっぺをベッドにつけて頭を降ろした。むにっと変形するほっぺさえ愛おしい。
息がちゃんとできるように、首とお尻を持ち上げて仰向けに戻すと、フィオは戻されてしまったのが不服なのか、再び寝返りを打とうと試みて腕を上げていた。
「魔力が暴走して、熱を出してと大変でしたけど、フィオは少しずつ、自分でも成長しようと頑張っているんですね……!」
こんな小さな生まれたばかりの赤ちゃんも、少しずつ一人でできることが増えていき、世界が広がっていくんだと感動した。
「ああ。……君が愛情をかけて世話をしてあげているおかげだろう」
背の高い彼を見上げると、薄い唇を上げ微笑みかけてくれた。
「そんな、アーサーさんが助けてくださったからです」
薪を割って、買い出しをしてくれて、昨日はフィオの魔力の暴走を止めてくれた。
あなたのおかげでもあると、私は首を振る。
照れて恥ずかしいせいか、なんだか頬が熱くなっているような気がする。
すると、アーサーさんが私の顔をじっと覗き込んできた。
「な、なんですか……?」
すっと通った鼻筋、サラサラの銀髪が、それこそキスしそうな距離にあり、私は動揺して目を瞑ってしまったが。
「エレナ――君、熱があるんじゃないか?」
「え?」
どうやら、頬が紅いのも頭が熱いのも、褒められて照れたからではないらしい。
「熱っ……間違いない、フィオの熱がうつったんだよ」
右手で自分の額、左の手のひらで私の額を触ったアーサーさんは、左手が明らかに熱を持っていると悟って驚く。
体調を崩した子供の世話をして、自分も倒れてしまうのは母親あるあるだと、よく聞くけれど。
「そんな、熱がうつる、なんて……」
体調が悪いのを自覚した途端、頭は痛み出し、悪寒がし、目の前はぐるぐると回り眩暈がし始めた―――。
声を潜めてはいたが、私の声と拍手でアーサーさんが起きてしまった。
眉間に皺を寄せ、寝起きの虚ろな瞳で辺りを見渡し、ここが自分の家ではなく私の屋敷で、フィオの看病をしていたことを思い出したようである。
「ふわぁ……おはよう、エレナ」
「おはようございます、起こしてしまってすみません」
「いや平気だ。フィオの熱は下がったか?」
目をこすっているアーサーさんは寝起きでも優しい。しかし興奮冷めやらぬ私は、そんな彼に喜びを伝える。
「おかげさまで熱は下がりました。さらに! たった今寝返りしたんですよー!」
「え?」
アーサーさんは予想外の返答に少し驚いた顔をし、手招きをする私の方へと向かって立ち上がった。
両腕で体を支え、必死に首を上げているフィオが、一晩中看病をしてくれた銀髪の青年に向かって、にこっと微笑んだ。まるで自分の寝返りした姿を見てほしいかのように。
「すごいな、自分でこの体勢になったのか?」
「そうなんですよ、ゴロンって頑張って寝がえり打ったんです!」
「ううー!」
フィオはそこで力尽きたのか、うつ伏せで首を持ち上げるのを止めて、もちもちのほっぺをベッドにつけて頭を降ろした。むにっと変形するほっぺさえ愛おしい。
息がちゃんとできるように、首とお尻を持ち上げて仰向けに戻すと、フィオは戻されてしまったのが不服なのか、再び寝返りを打とうと試みて腕を上げていた。
「魔力が暴走して、熱を出してと大変でしたけど、フィオは少しずつ、自分でも成長しようと頑張っているんですね……!」
こんな小さな生まれたばかりの赤ちゃんも、少しずつ一人でできることが増えていき、世界が広がっていくんだと感動した。
「ああ。……君が愛情をかけて世話をしてあげているおかげだろう」
背の高い彼を見上げると、薄い唇を上げ微笑みかけてくれた。
「そんな、アーサーさんが助けてくださったからです」
薪を割って、買い出しをしてくれて、昨日はフィオの魔力の暴走を止めてくれた。
あなたのおかげでもあると、私は首を振る。
照れて恥ずかしいせいか、なんだか頬が熱くなっているような気がする。
すると、アーサーさんが私の顔をじっと覗き込んできた。
「な、なんですか……?」
すっと通った鼻筋、サラサラの銀髪が、それこそキスしそうな距離にあり、私は動揺して目を瞑ってしまったが。
「エレナ――君、熱があるんじゃないか?」
「え?」
どうやら、頬が紅いのも頭が熱いのも、褒められて照れたからではないらしい。
「熱っ……間違いない、フィオの熱がうつったんだよ」
右手で自分の額、左の手のひらで私の額を触ったアーサーさんは、左手が明らかに熱を持っていると悟って驚く。
体調を崩した子供の世話をして、自分も倒れてしまうのは母親あるあるだと、よく聞くけれど。
「そんな、熱がうつる、なんて……」
体調が悪いのを自覚した途端、頭は痛み出し、悪寒がし、目の前はぐるぐると回り眩暈がし始めた―――。