育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
22.既婚者はNGです!
「……アーサーさん、前から気になっていたんですけど」
「なんだ?」
私はベッドに座り、ホットレモネードのカップを持ったまま、ずっと気になっていたことを思い切って問う。
「あなた以前に、子供を育てたことがあるんですか?」
割れた窓を木で塞いだ、薄暗い部屋の中で静かに尋ねる。
アーサーさんの赤い目が真っ直ぐに私を見つめ、彼の薄い唇が、何かを思案しながらゆっくりと開く。
「……昔の話だ」
そう言って、彼は腕を組んで黙り込んでしまった。
肯定はするけれど、何かを言いたくないような含みを持って、アーサーさんは呟く。
(やっぱり子育て経験があるんだ)
言葉を濁し、いつも的確で臨機応変な彼が視線を逸らすなんて、その意味は一つしかない。
ベッドで上半身を起こした体勢のまま、私は手を固く握る。
「やっぱりそうなんですね。じゃあ、看病とはいえ私のような独身女と一つ屋根の下で過ごしていてはだめです。
町のお医者さんを呼んで、アーサーさんはご自分の家へ戻ってください」
意を決して、そう伝えた。
「……は? 何を言ってる?」
アーサーさんは、意味がわからないと言わんばかりに首を小さく傾げた。
しかし、熱でぼんやりしているのと、堰き止めていた感情が溢れ出したせいで、私の言葉は止まらない。
「こんなの、奥さんにバレたら不倫だって言われちゃいますよ……!
アーサーさんのことは信用してますし人間としてとても好意を持ってますが、パートナーの女性に誤解されるようなことはしたくないんです……!
雇用主から前払いでもらった給与を、慰謝料の支払いになんて使えないですし!」
芸能人のスキャンダルや不倫が大嫌いな私は、自分が当事者になりたくはないと訴えかける。
「おい、待て待て、落ち着け」
涙をにじませながらまくし立てる私を止めるように、アーサーさんが身を乗り出す。
「俺に妻はいない、勘違いだ」
焦りながらなだめる様子が、後ろめたいことがあるように感じ、私はムキになってしまう。
「奥さんがいないのなら、離婚したんですか?
でもお子さんがいるのなら養育費も払ってるでしょうし、パパに甘えたい時期のお子さんがいる男性と一緒にいるのも、私は気が引けるので……!」
疲れと熱で冷静さを失っている私は、頭を押さえながら目に涙を浮かべ訴える。
「今まで一度も、結婚も離婚もしたことがないし、子供もいない。本当だ」
フィオが魔力の暴発を起こしても動揺していなかったアーサーさんが、思ってもいなかった私の言葉に初めて動揺して目を泳がせ、椅子から中途半端に立ち上がりオロオロとしている。
「妻子のいる夫の単身赴任か、バツイチ子持ちでなければ、赤ちゃんの抱っこがあんなに上手だったり、離乳食の時期とか知るわけないじゃないですか!」
私は熱でハイになっているのか、語気を強く言い放つ。
「ふん!」
そのタイミングで、床に寝ていたフィオが力強くゴロンと寝返りを打った。
私の叫び声と、フィオの寝返りを交互に浴びたアーサーさんは瞬きをしてしばらくキョトンとしていた。
「なんだ?」
私はベッドに座り、ホットレモネードのカップを持ったまま、ずっと気になっていたことを思い切って問う。
「あなた以前に、子供を育てたことがあるんですか?」
割れた窓を木で塞いだ、薄暗い部屋の中で静かに尋ねる。
アーサーさんの赤い目が真っ直ぐに私を見つめ、彼の薄い唇が、何かを思案しながらゆっくりと開く。
「……昔の話だ」
そう言って、彼は腕を組んで黙り込んでしまった。
肯定はするけれど、何かを言いたくないような含みを持って、アーサーさんは呟く。
(やっぱり子育て経験があるんだ)
言葉を濁し、いつも的確で臨機応変な彼が視線を逸らすなんて、その意味は一つしかない。
ベッドで上半身を起こした体勢のまま、私は手を固く握る。
「やっぱりそうなんですね。じゃあ、看病とはいえ私のような独身女と一つ屋根の下で過ごしていてはだめです。
町のお医者さんを呼んで、アーサーさんはご自分の家へ戻ってください」
意を決して、そう伝えた。
「……は? 何を言ってる?」
アーサーさんは、意味がわからないと言わんばかりに首を小さく傾げた。
しかし、熱でぼんやりしているのと、堰き止めていた感情が溢れ出したせいで、私の言葉は止まらない。
「こんなの、奥さんにバレたら不倫だって言われちゃいますよ……!
アーサーさんのことは信用してますし人間としてとても好意を持ってますが、パートナーの女性に誤解されるようなことはしたくないんです……!
雇用主から前払いでもらった給与を、慰謝料の支払いになんて使えないですし!」
芸能人のスキャンダルや不倫が大嫌いな私は、自分が当事者になりたくはないと訴えかける。
「おい、待て待て、落ち着け」
涙をにじませながらまくし立てる私を止めるように、アーサーさんが身を乗り出す。
「俺に妻はいない、勘違いだ」
焦りながらなだめる様子が、後ろめたいことがあるように感じ、私はムキになってしまう。
「奥さんがいないのなら、離婚したんですか?
でもお子さんがいるのなら養育費も払ってるでしょうし、パパに甘えたい時期のお子さんがいる男性と一緒にいるのも、私は気が引けるので……!」
疲れと熱で冷静さを失っている私は、頭を押さえながら目に涙を浮かべ訴える。
「今まで一度も、結婚も離婚もしたことがないし、子供もいない。本当だ」
フィオが魔力の暴発を起こしても動揺していなかったアーサーさんが、思ってもいなかった私の言葉に初めて動揺して目を泳がせ、椅子から中途半端に立ち上がりオロオロとしている。
「妻子のいる夫の単身赴任か、バツイチ子持ちでなければ、赤ちゃんの抱っこがあんなに上手だったり、離乳食の時期とか知るわけないじゃないですか!」
私は熱でハイになっているのか、語気を強く言い放つ。
「ふん!」
そのタイミングで、床に寝ていたフィオが力強くゴロンと寝返りを打った。
私の叫び声と、フィオの寝返りを交互に浴びたアーサーさんは瞬きをしてしばらくキョトンとしていた。